キヨ

ラストエンペラーのキヨのネタバレレビュー・内容・結末

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ラストで大号泣した。
長く語られる映画って、やっぱりそれだけのものがあるんだなと実感した。

大清帝国第12代にして最後の皇帝の愛新覚羅溥儀の即位から始まる人生の映画館。
戦犯として捉えられた現在と、過去を行ったり来たりする構成で話は進む。
母から引き離され何もわからないまま即位する幼年期、帝政の崩壊を知り戸惑う少年期、外の世界を渇望する青年期、満州国の再起に奔走する壮年期、牢獄での老年期と、それぞれの時代で、個としての自分と、支配する階級に生まれそう育てられた自分との間で揺れるお話し。


幼い頃の即位式で、思わずコオロギの鳴き声に誘われ、跪く家臣の列に入り、コオロギの所有者から壺ごとコオロギを献上される。このコオロギは、あなたとずっと一緒ですよと言われる。
ラストで、年老いた主人公が紫禁城の玉座に近づくと、セキュリティの息子だという少年から、立ち入り禁止だよと、注意される。そこで、主人公は、私もかつてここに座ったことがあるのだよと話す。すると少年が、証拠を見せてと、無茶な要求をする。主人公は静かに微笑むと、玉座の裏から壺を取り出し、少年へと渡す。少年が壺に気を取られている間に、主人公はふっと消えてしまった。少年が壺の蓋を開けると、中からはコオロギが現れるのであった。
この、ラストが、本当に良くて、涙が止まらなかった。時代によって思想も主義も変わって、まさに諸行無常なんだけど、確かにそこにあった無垢故の幸せが小さなコオロギというちっぽけなものとして、あんなに忌まわしかった城の中の玉座の裏に存在し続けているかということが無性に切なかった。

あと、少年の、「証明してよ」というセリフが、主人公の弟がかつて主人公に放った台詞と同じだったんだけど、それに対する回答が、コオロギだというのがよかった。幼い当時、弟から投げかけられたこの質問に対して主人公は、インクを飲むいう無理難題を側近に押し付けた。権力でしか皇帝を示せなかったのに対して、ラストは自身の中にある皇帝としての始まりを示すという対比に感じて、個人的にはすごくグッときた。
キヨ

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