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ラストエンペラーのkentarismのレビュー・感想・評価

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
3.4
初ベルトリッチ。新文芸坐にて。

・音楽が提供するスケール感が凄すぎる。複数人関わっているが、坂本楽曲があまりに強い。一発でもっていかれてしまう…

・ヴィットリオ・ストラーロの凄み。逆光下で布越しに戯れるシーン、掛け布団内のセックスシーンが触覚に訴えてくる映像になっており官能性がある。終盤の紅衛兵の踊りの中で旗を振る男、紫禁城の布など終始布周りに異常なこだわりが。これはベルトリッチのこだわりなのか?

・眼鏡をかけて結婚相手を吟味する場面。西洋圏で発展してきた眼鏡を英国人の勧めで装着し、女性を品定め。その際、溥儀を囲む女性達の顔アップの連続。近代化の産物であるカメラアイならではの画であり、眼鏡と同じレンズが写している。劇中で溥儀が眼鏡をかけるのは一つのターニングポイントかもしれない。先帝の妃達が反対してるのも面白い

・印象的な「She is my butterfly.」。乳母というより好きな女という字幕の良さ。これが妙に刺さる自分の男性性にセルフ呆れ

・コオロギの鳴き声に敏感に反応する子どもが近代化やイデオロギーに振り回された結果、緑に触れる庭師として心の安寧を得ているように見える史実と違う結末はオチとしての分かりやすさを取ったのか、あるいは資本主義批判がしたかったのか。取り調べで西洋製品を絶賛してる男が靴紐も自分で結べず、用を静かに足せないというのは手厳しい

・ベルトリッチは共産主義の影響を多分に受けているという話を知ると納得感はある。史実と変えて終盤の溥儀の一市民感を強調してたのもニュアンスを感じる

・令和に観るとオリエンタリズムがキツい。こんな風に撮らなくてもいいのにと思ってしまう。やっぱり80年代にイタリア人が撮った映画って感じがする。甘粕にハラキリさせようしてたのが典型的すぎる。役者・坂本龍一がオリエンタリズムの象徴として機能させられているのも気になった
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