何食わぬ顔ーーー自分のしたことや思っていることが人に知られては困る時、注意をそらすために平然と振舞うさま。
日常生活ではなかなか聞くことのない無色透明な状態の声。言葉以上に物語ってしまう体。非合理で矛盾だらけなおかしくて愛おしい人間味。
2002-2003年、東大在学中に制作された8ミリフィルムの自主映画ということだが、『Passion』や『親密さ』『ハッピーアワー』に繋がる要素が随所にあって終始相づちを打つような、どこか懐かしさを感じるひとときだった。
暗がりで見えにくいから目を凝らし、周囲の雑音に負けないように耳を澄まし、説明されていないから色んな可能性を想像してみる。
お膳立てされたフルコースもいいけれど、バランスを取って生きるためには精進料理で食の意義に立ち返る日も必要だ。
夏が来る前に観られてよかった。