春とヒコーキ土岡哲朗

インターステラーの春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
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頭脳派ノーランが、魂を見せた。

ノーラン監督が「自分が観て育ったブロックバスター映画をもう一度」という志を宣言して作った本作。ノーランは、宇宙開発が縮小し、テクノロジーの発達が内向きになっていることに対し、「下(スマートフォン)ばかり見るな。上を見ろ」という考えが募り、今回の映画にその思いを込めたと明かしている。
『インセプション』では、意識の中に深く入り込んだ先の「虚無の世界」が登場したが、それが下を見ること。今作では、地球の危機を嘆くよりも、宇宙に可能性を求める人々の物語。それを描きながら、過去のブロックバスター映画の良さを目指す。そのストーリーもコンセプトも、人類がかつて求めていた理想を勝手に諦めたことを叱咤し、本当の夢を思い出させるようだ。

個人の幸福か、人類の存続か。
序盤は宇宙へのロマン満載だが、飛行士たちはもう個人のロマンではなく使命のために動いている。だが、最後は主人公のクーパーが娘と離れたくなかったという個人的な思いが原動力となってすべてを解決する。
宇宙や次元を扱う壮大な物語が、個人的な家族愛に左右されて終わる。大きなことも、一つ一つの愛からしか成り立たないと示す、優しく熱い終わり方。
惑星ごとの「時間の進み方のズレ」や「一方通行な通信」というSF的要素が、二度と戻ってこない時間を浪費してしまった親子のすれ違いと重なる。
ラストカットは、クーパーがこれからヒロインのアメリアを宇宙に助けに行く必要がある、というところで終了。まだこれから続きがある終わり方に、私たちもこの映画を観て終わりじゃなく、これから考えて生きていくんだと思わされる。