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物語る私たちのmasatのレビュー・感想・評価

物語る私たち(2012年製作の映画)
2.8
さすが、今やトップクラスの監督。
私的な内容も、仕掛けを施す。夫が編集マンだけあって、構成も観客を意識し、練り上げられている。
過去の8mmフィルムのいくつかは、なんと「再現フィルム」だったと言うのが、後半驚く。もはや、フェイクの域なのか?と思わせなくもないが、そもそも“ドキュメンタリー”は、フッテージをカットした瞬間に、そのドキュメンタリー性は失われるもの。即ち編集した段階で“作為”が入るのだから、もう製作者にとっての作品になる。なので、そもそもがあやふやな領域でしかない。だからこそ、その作家の視点に同調できるかどうかが勝負。
誰だか知らない“私たち”が物語る本作は、
少なくとも、二人の父とサラの感情は迫ってくる訳だし、その先にいる母の幻影は映画的に揺らめいている。だこらこそ、映画を見世物としての装置として理解しながら、ありのままの剥き出した人間を抑えようとする実録性、その相反する両極を巧みに操りながら、あるトリックや演出を駆使し、巧い構成を編んだサラは、非凡な才能であると、実感し、体感できる。

マイケル父が最後に言った様に、
 さびしいとか、
 愛しているとか、
 忘れないとか、
そんな当たり前の感情が響く。
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