このレビューはネタバレを含みます
あらすじ
子どもが死に向かっていくストーリー
感想
・ツイッターで 「映画 おすすめ」 と探し出てきたから観てみた。
・出だし20分くらいは正直これが続くときついなと思ってしまう単調さ。
日常の切り取りみたいな、フランス映画の悪いところみたいな感じ。
しかし見進めるとその単調さが物語の奇妙さ?不気味さ?を助長していく。
・胸糞悪い系と紹介されていたのである程度構えて見始めたが、胸糞悪いという感想にはならなかった。
途中から普通に気分が悪くなった。
胸糞悪いとかいう軽いものではなかった。
普通に吐き気を催す。
映画館で見ていたら後半のハエの羽音や画面越しでも臭ってきそうな腐敗臭に耐えられなかったと思う。
ストーリー自体はもちろん気持ちのいいモノではなく、ただこれが胸糞悪いと表現していいのかは微妙・・
・映画の作りこみは素晴らしい。
リアルすぎる。
定点カメラによる撮影などもそうだが、それよりも登場人物のキャラクターや部屋構造など。
・最初の幸せ時代の部屋はきれいに整頓されていて、キッチンも綺麗。
おもちゃがきちんと収納されている。
キッチンは後ろに冷蔵庫、食器棚があり、キッチンルームとなっている。
きちんとコーディネートされているおしゃれではないけど、普通のお部屋。
母親はわざわざエプロンして洗濯物を干す。
窓からは空が見えて、間取りも広く、おそらくいいマンションなんだろうなと思わせる。
ところが父親と別居した後、母と子2人と住み始めたのは狭いアパート。
おそらく古い物件でキッチンはダイニングスペースの壁に付いているタイプで、部屋のドアは押戸ではなく引き戸。
床材は実家感のあるクッション性のありそうな深い茶色のフローリング。
家具も全体的に古臭い。
ちゃんと収納されていたおもちゃは、カラーボックスに入れただけ。
寄せ集めの安い家具なんだろうな、と想像できた。
・高校時代の友人が登場。
子供の前でタバコを吸う、話の内容は男。
夜やればぁ~?と彼女は夜職なんだろうなと想像させるセリフ。
そして友人に会ってから母親は夜職を始めたのだろうと思わせる、カットが変わるたびに増えていくドレス。
・長女が母親の真似をして化粧するシーンは、幸せ時代の母親からは想像できない真っ赤なリップが使われていて、変わってしまったんだなと思わされる。(分かりやすく真っ赤にしただけかもしれないが)
・友人に「なんか資格でも取ろうかな~」と言っていたし、編み物しながら勉強していたのに、長女が問題集に落書きしているのを見つけても何も言わない母親
・長女に「何食べたい~?」と聞き「オムライス~!」と答えるも、面倒くさそうに「え~~チャーハンでいい?」と聞く母親。
幸せ時代ならオムライス作ってたし「本当にオムライスが好きだね~」と言っていたシーンがあったのに、あぁ・・変わってしまった・
・洗い物している後姿は平成を感じるギャル。
そんなデニムのショートパンツ履くような人物像じゃなかったのに・・
あぁ・・変わってしまった・・
・彼氏か怪しい男を連れ込んで性行為をするが、長女は起きている。
起きているのをアピールしているのか、困らせたいのか、母親のメイク用品を床に落として音を出すが気付いてもらえない。
・「好きな果物なんだっけ~?」「イチゴ!」と答えると「要くんがイチゴが乗ったショートケーキ買ってきてくれたよ~!」と嬉しそうな母親。
夜中にケーキの話をするな。早く寝なさいって言ってた母親はどこへ・・
そして全然嬉しそうじゃない長女。分かる。そういうことじゃないよね。
そして映される3Pあって1Pだけイチゴを食べられたケーキ。要くんイチゴだけ食べたんか!?
・大量に作ってくれたチャーハン。
多すぎないか!?3合くらいありそうだけど・・
と思ったが、後に母親は出ていき、長女はそれを食べる。
なるほど・・あとで食べる用に大量に作ったんだ。
・缶詰を包丁で開けようとする長女。
・マヨネーズをチューブから吸う長女。
・弟がハイターを見つけるが「だめだよ!」と取り上げる長女。
ちゃんと守らなければ、というより母親の真似かな。
・なぜか開かないリビングから出るためのドア。
ガチャガチャして諦めて漏らす長女。
きちんと靴下を脱いでパンツも履き替えて、タオルでごしごし拭く。
でも拭き方がまだ幼くて、そうだよな・・この子まだ幼いんだよね・・と思い出させる。
・弟が死んでしまった後、特に気にする様子もない。
死というのがまだ分かっていない。
寝てるのかな~くらいに思っているのだろうか。
それが妙にリアル。
・2人とも髪の毛がべたべたになっていく。
母親が結ってくれたみつあみがだんだんほどけていく。
頭が痒いのかボリボリ掻く長女。
・ゴミ袋を漁ったり冷蔵庫を漁ったりお腹が空いているような長女。
弟のために粉ミルクを作ってあげるが、缶は倒れ粉が床に散らばっている。それを小さい手で掴んで哺乳瓶に入れて、ペットボトルの水を入れて飲ませてあげる。
自分も飲む。ぐびぐび飲む。
ついに食べるものがなくなって粘土を食べる。
・母親が帰ってきた。
てっきり長女は開けることのできなかった缶を抱きしめながら餓死するのかと思った。
どうやら開けれなかったリビングのドアはガムテープで向こうから塞がれていた。窓も同様だった。しかも子供では届かない位置で貼っていた。
・洗濯機に洗剤を入れて作動させるがエラーですぐに止まってしまう。
母親は両手で中身の位置を調整して再度作動させる。
弟を洗っているようだった。
たしかに臭そうだもんね。
・長女を風呂に入れようと衣類を脱がす。
パンツが汚れている。そりゃそうだ。
「ママも一緒?」と聞くが無視される。
そして浴槽で溺死させられた。
・母親は部屋を片付ける。
そしてダイニングに座り、お腹を撫でる。
おい、まさか妊娠してるのかよ、よく見るとお腹が少し大きい気がしてきた。
そして編み物をしていた棒を膣に入れた。
え、堕胎しようとしてる?
そんなの無理だろ・・
そして風呂のシーンに変わり、股から流血している様子が映される。
そういえば映画の冒頭で、血が付いたパンツを洗うシーンがあった。
水が流れていく構図が一緒だった。
そして幸せ時代に部屋ピクニックした際に使ったレジャーシートで子供2人を包む。
おわり
終わりだよこんな映画。
別に直接的なシーンがあったわけではないが、グロかった。
救いがない。
きっと母親の人生にも、父親の人生にも、高校時代の友人も、要くんも、みんな救いがない。
思うのはもっと早く母親が福祉に繋がれていれば、ママ友やお隣さんと交流があれば、もしかしたら子供を助けられたのかもしれない。
でも長女はきっと大人になれてもパーソナリティ障害とかそういう人間関係でのトラブルが絶えないだろうし、しょうもない男にしがみついて身籠り、母親と同じような人生を送るのだろう。
弟はまだ幼いからどうにかなるかもしれない。
でも長女は無理だと思う。
人は自分が思っている以上に親の影響を受ける。
ああはなりたくない、と思っていても結局似たような人生になってしまうものだ。
そう考えると子供2人はあそこで死んでしまってよかったのかもしれない。
人生に救いなんてないのだから。