このレビューはネタバレを含みます
夫にフラれ、シングルマザーとして頑張っていた主人公が、水商売に沈んでいく。
最初は良き母親として子供の情緒教育をし、お弁当にもしっかりと時間をかけていた。
しかし、夜の仕事をするにつれ、子供という存在が負担になっていく。
そしてある日を境に帰ってこなくなる。
残された姉は弟の面倒を必死に見るが、子供が子供の世話を見ることは難しいのは想像に難くない。
もう声のしない弟の誕生日を砂嵐のテレビと共に祝い、徐々に自身も食料がなくなり、冷蔵庫の中のマヨネーズや、食べられるなら粘土でも食べる。
ここまでの視点が複数の定点カメラで映し出されることで、見えないところでより悲惨な情景になっているのだろうな、と想像を掻き立てる。
最後、帰ってきた母親は息子の死体をガムテープで包み、娘を溺死させた。
娘が無邪気な声で「ゆう、動かなくなっちゃった、なんでだろうね?」と母親に問いかけるシーンが印象的でした。
2人の死体を椅子に座らせ、マフラーを巻き自分の子宮に糸を通そうとするシーンはまさしく主人公の「なんでこんなことになったんだろう」「子宮からやり直したい」という負の感情を彷彿とさせる。
最後の血のシャワーシーンから、主人公は3人目の子供を授かり、その子を殺しに来たのだろう。
誰が悪いのだろうといえば母親と答える人が大数だろうが、このような状況になるまで彼女を放っていた社会すら問題なのではないか。
見ていて胸が苦しくなる映像でした。