Violet

グランド・ブダペスト・ホテルのVioletのレビュー・感想・評価

4.3
ピンクを基調としたホテルをメインにしたジャケットを見ると、なんかお洒落で可愛い映画💄という印象を受けるが(この印象が作中で裏切られることはないけれど)、しっかりとサスペンスであったことに驚いた!
全体的な映像の美しさやキャラクターのチャーミングさとは正反対な予想外の怖い描写が突然現れるのだが、このアンバランス具合がまた絶妙なのだ。ストーリーの展開もテンポが良くて◎
サスペンスだけど重くなりすぎずでもコメディに寄りすぎることもなく、さらに人間関係や背景設定も含めて丁寧に作られており、
コメディサスペンスのジャンルでは私の中ではトップクラス!

✂︎--以下ネタバレ---------


























▼戦争そしてホロコースト
作品の中で戦争に関する描写やナチス、ホロコーストを彷彿とさせる表現が一貫して見られていることはとても興味深かった。
次の3人の登場人物は実際にナチスのターゲットとされた3つの主な集団を表している。
①Gustave
Gustaveは自身がバイセクシャルであることをオープンにしていたが、ナチス支配時には実際に同性愛者であることを理由に「有罪」と判決された人々が数万人もおり、5,000〜15,000人が強制収容所に送られ虐殺された(ナチスによる同性愛者迫害)。
②Zero
Zeroは劇中で両親が虐殺されて難民となってしまったことを語っている。彼の住む村は、ロマ人(ジプシー)や非アーリア人といったナチスのターゲットとされた少数民族を示唆していると考えられる。
③Deputy Kovacs (劇中で指を切断された上に殺害されてしまう弁護士)
「ユダヤ人」の弁護士。
さらに興味深いのは、GustaveやZeroに対して、劇中を通して「ユダヤ人」の弁護士であるDeputy Kovacsが味方として描かれている点である。

差別やホロコーストが生み出す悲劇、そして戦争が終わった後でさえもそれがもたらした貧困や飢餓により流行病が蔓延し、多くの命が失われてしまうことの虚無。
コメディサスペンスの中に込められた悲痛なメッセージが印象に残る。

▼主題歌・挿入歌
めちゃめちゃ印象的な楽曲だなと思って調べたら、今作を作るにあたって、Wes Anderson監督は時間をかけて音楽を研究し、また楽曲担当のAlexandre Desplatはオーケストラ用の楽器を一切使わず、ロシア産のマンドリンの一種バラライカやピアノの原型と言われているツィンバロンを用いて楽曲を制作したとのこと。
こうして完成した楽曲を監督は”Zubrowkian” musicと命名したらしい!✨

▼キャラクター
・Gustave
話し方がチャーミングでとっても素敵〜。ヨーロッパの東の端にある架空の国「ズブロフカ共和国」が舞台なのでヨーロッパを意識した英語の話し方にしてるのかなあと思ったけど、Gustaveを演じたRalph FiennesはEngland出身だったから(イギリス英語は品があって好き)もともとアメリカ英語を話す人ではないのね💡
どんな時でも詩を読むことや香水で身だしなみを整えることを忘れないところや、刑務所の中でもその魅力的な人格と頭の良さで囚人たちとも仲良くなってしまうところとかは思わず笑っちゃう。素敵な紳士。
・Zero
兎に角可愛い。笑 1番笑ったのは新しいロビーボーイに「ロビーボーイたるや」を教授しちゃうところ。笑
”A lobby boy never provides information of that kind. You’re a stone wall, understood?” lol
・Agatha
やっぱり可愛いSaoirse Ronanサマ。
Violet

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