Violet

ブリキの太鼓 ディレクターズカット版のVioletのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

覚悟して見たけれど…
こーれーはーー…
この先見返すことはないと思うし、私は特に人には勧めないかな。
評価はつけられません😇笑

色々と調べたり考えたりしたことだけ自分用のメモとしてまとめておきます。

映画の舞台となったのは自由都市ダンツィヒ(現グダニスク)。ドイツ人が人口の95%を占め、残りは少数民族としてカシューブ人やポーランド人が住んでいた。
本作には、同じ土地・同じ時代に生きる複数の人種が描かれており、それぞれの立ち位置や境遇もとてもリアルなものだと思う。
Oskarの祖母Anna: カシューブ人
Agnesの夫Alfred: ドイツ人
Jan: ポーランド人
おもちゃ屋のMarkus: ユダヤ人

生まれる前から大人の汚らわしさを知っていたOskarは、自らの意思で3歳で身体的な成長を止めることにした(この発想がまずすごい)。のちにアンナが赤ちゃんを授かるが、こんな時代に生まれてくるのは可哀想だとお腹の中の赤ちゃんを殺そうとする描写もある。

Oskarを演じた David Bennentは当時12歳。本当に、言い方良くないけどすごく怖かった。すべてを見透かされているようで目を逸らしたくなる。
正直、12歳の子供があんな過激なシーンの数々に挑んでいることにわたしは眩暈がしそうだったけれど、彼のインタビューを読んだところ、”Children already know everything by the age of ten. It was fun for me. (子供は10歳までにはなんでも知ってる。(レモネードパウダーのシーンは)僕にとって楽しいものだったよ)”と話していて、やっぱりわたしみたいな凡人とは何もかもが違うのだと思わされました。笑

最終的に、Oskarは成長することを受け入れて、成長を再開する。「自分は子供のままだからこの世界のカオスとは関係がない」と、Oskarはずっと自身に言い聞かせていたのだと思う。汚らわしいと思っていた大人たちの情事を結局求めてしまっている自分に、自分の行動や選択のせいで多くの周囲の人々が命を落としてしまったという事実に、こうした目を背け続けていた現実に、ようやく向き合ったのだと思う。

『ブリキの太鼓』のコメンタリーにはこんなコメントがあるらしい:
「1950年代ドイツ人たちは、自分たちはヒトラーに騙されたのだと考えていた。これは自分たちの誇りと尊厳を守るためであり、戦争の責任から逃れるためだった。そんな時代にギュンター・グラスによって出版されたこの作品には自分たちもヒトラーに魅せられ、進んでヒトラーのその情熱の中に身をささげていったのだということを描き出した点である。」

多くのドイツ人が、自分は無実であったと、あの時代に生まれていれば自分の行動は仕方がなかったのだと、そんなふうに思い込もうとしていた。
けれど、嬉々としてHeil Hitler(ヒトラー万歳)を唱え、ポーランド侵攻、ユダヤ人迫害を当然の如く、まるで正義の如く行っていたのは、他ならぬドイツ人国民なのだ。

本作の原作者Günter Grassは、晩年に出版した自伝で自身がナチスの少年親衛隊に入隊していたことを告白した。これもきっと、「自分は決して無実な国民ではなかった」という事実と向き合い、懺悔したのだろう。
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