ナナミゲ

グランド・ブダペスト・ホテルのナナミゲのレビュー・感想・評価

4.2
寝る前に観ようと、最近ハズレばかりだったのもあり、もしかしたらそろそろ頼むよ…という淡い期待を込めて観た。

大当たり。ありがとうございます。

神経質なほどに色と画角に拘られた画面は美しいとしかいいようがない。
途中、大脱走な展開を経るのにコメディラインがジワジワと強くなるので、そこが合わない人は「何これ」となるかもしれないけれど、どこまでも画面は作り込まれている。
人種、戦争、難民についてははぐらかさない。確固たる意志を感じるセリフは、あまり日本では考えられないものかもしれない。

すっかり知る人ぞ知るとなってしまった孤高のホテル。そこであった人と、ホテルを巻き込んだ悶着。
あくまで人と人の対話と義理の話は観ていて削れるところがない。
小さい頃、私はエレベーターガールになりたかった。あの謎のレバーを回しながら「◯◯でございます」とお上品に微笑むお姉さんは憧れだった。
それももう、言っても知らない友人ばかりになってしまった。特別だった。
あとは一度でいいから「神経質に特別」な扱いされてみたい。マドンナが薄く残った飲みかけのペットボトルの水を見ると発狂するので、視界からすべて先んじて取り除くように、「彼女(私)が来るから大きな花を必ずここに。いつでもプールに行けるように準備を」なんて裏で手配されてみたかった。作中のちょっと剽軽な彼らのようなホテルのスタッフに。
ナナミゲ

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