Panierz

無常のPanierzのレビュー・感想・評価

無常(1970年製作の映画)
5.0
快楽は涅槃にあらず、オルガスムそのものにある。ウィルヘルム・ライヒっぽく言えば何の障害もなく性的エネルギーの放出に耽溺することであり、それ以外は無である。
無常を受け入れつつ悟ることを目指すわけでもない。ブッディズムの「無」とニヒリズムの「無」を止揚した先にある死への意識。生きる意味などないが、人はやがて死ぬというただ一つの真理を見つめること。ヘシオドスの神統記におけるゼウスのごとく鯉の腹を裂き、古代インドの停止した時間を再開させる。それはバタイユの痙攣的な生の力の解放であり、終わることのないエロティシズムの啓示である。
こどもの日に鯉のぼりを揚げるノスタルジックな記憶とともに、階段をのぼるという日々の積み重ねに収斂していくラストは美しい。
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