Panierzさんの映画レビュー・感想・評価

Panierz

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レネットとミラベル/四つの冒険(1986年製作の映画)

4.5

ロメール的な奇跡の共有から二人の都市での冒険が始まっていく。思想の違いによる衝突は未解決のまま、お互いの小さな冒険心は共犯という潤いのある小さな罪の共有へと集約していく。この共犯性/共生性が、ロメール>>続きを読む

無常(1970年製作の映画)

5.0

快楽は涅槃にあらず、オルガスムそのものにある。ウィルヘルム・ライヒっぽく言えば何の障害もなく性的エネルギーの放出に耽溺することであり、それ以外は無である。
無常を受け入れつつ悟ることを目指すわけでもな
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西瓜(2005年製作の映画)

3.7

映画は性的象徴のアンサイクロペディアだ、みたいなことを澁澤龍彦は言ってたけど、映画における性表現と象徴の不可分な関係をここまで直截的にクローズアップした作品は中々ない。
カメラというリアリズムから出発
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クローズ・アップ(1990年製作の映画)

4.5

実際に起きた詐欺事件を俎上に載せ、演じるということそれ自体が孕む自己否定性を抉り出すドキュメンタリー映画。シネマヴェリテがどこか文化人類学的なフィルターをかけていたのに対し、憧れの映画監督になりきると>>続きを読む

しとやかな獣(1962年製作の映画)

3.2

家族という一つの小さな公共性をクローズアップし、資本主義の不条理を内側からあぶり出していくクリティカルな構造はいいけど、評価されてるらしいテンポは寧ろ悪いと感じた。モノローグが喜劇的なリズムに致命的な>>続きを読む

世紀の光(2006年製作の映画)

3.6

人間の根源的なもの、恋愛感情や権威主義を医療が進歩しても治らない一種の症状として扱いながらも、そこから視点や対象という変化するものに焦点を当てて症状を未来へ向かう記憶としてポジティブに捉える。臨床をプ>>続きを読む

勝手に逃げろ/人生(1980年製作の映画)

5.0

ベンヤミン的にカメラによって視覚の無意識を暴こうとするゴダールの視座に惚れた。スローモーションにより運動の要素を明らかにし、既知のうちにある全く未知のものを発見する。暴力と愛に潜む根本的なもの、主観で>>続きを読む

トーク・トゥ・ハー(2002年製作の映画)

3.4

童話や神話では、母性は愛情とともに支配のメタファーとして語られることも多く、ベニグノは正に母の支配的な魅力に呑み込まれ自立を阻まれた人間として描かれてる。ベニグノの結末が、母が亡くなってからもその桎梏>>続きを読む

イタリアにおける闘争(1970年製作の映画)

3.7

思ったより観れる。資本論を生産様式の観点からしか読み解いてなかった当時のマルクス主義の様相がなんとなくわかる。

The Green Fog(原題)(2017年製作の映画)

5.0

サンフランシスコを舞台とする映像をサンプリングし繋ぎ合わせ、ヒッチコック『めまい』のプロットを敷衍して語る。『めまい』の記憶を喚起するような解像度の高いイメージと、ぼんやりと希釈されたようなイメージが>>続きを読む

あとのまつり(2009年製作の映画)

4.5

瀬田なつきの短篇は本当にすごい。天才だと思う。ゴダールというのは分かるんだけど、都市景観の異化作用にはどこか「20世紀ノスタルジア」っぽい宇宙を感じなくもない。もちろん質感とかは全然違うんだけど。とに>>続きを読む

「女の小箱」より 夫が見た(1964年製作の映画)

5.0

この映画のように、夢と私どっちが大事なのと若尾文子に迫られたい。人間の根源的で究極的な在り方は理性も悟性も剥ぎ取った愛にあると、増村保造は時代を超えて教えてくれる。

田園に死す(1974年製作の映画)

5.0

冒頭から格好良すぎるし、刺激的なショットの連続に脳内を攪拌される。
恐山/歌舞伎町の二重性。カリカチュアライズされた過去は、寺山修司が幼少期に恐山で見た亡霊と、青年期に歌舞伎町の病室の窓から見ていた若
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ベロニカ・フォスのあこがれ(1982年製作の映画)

4.0

戦後ドイツ国民が宿命的に背負わされる悪夢の記憶を、加害者と被害者両方の立場から描いていく。表現主義を踏襲したメロドラマの作りで破滅へ向かう絶望感を湛えた画面は、躁鬱的なコントラストにより更に闇深くその>>続きを読む

儀式(1971年製作の映画)

5.0

厳格な家父長制による抑圧、それぞれに宿る罪の意識と贖罪の連鎖。イデオロギー的な宗教構造を背景にした回想は、形骸化した律法主義と併置するように様式化した冠婚葬祭という儀式に集約される。それを揶揄するかの>>続きを読む

美しさと哀しみと(1965年製作の映画)

4.5

ファムファタル加賀まりこの艶麗さ。この種の文芸作品が纏いがちな湿っぽさも、篠田正浩のスタイリッシュなショットによって緩和され流麗なイメージの連なりを見せる。そのなだらかな語り口は、身を挺する復讐や自己>>続きを読む

闇に浮かぶ白い肌(1972年製作の映画)

3.8

眼に映るものは全てまやかしであるということを、盲目を通じて暴くという倒錯的で挑発的なプロットをポルノ映画でやるというシュールさ。雑な部分もこの奇抜さによって全てカバーされる。ロマンポルノの怪作。

愛の神、エロス(2004年製作の映画)

3.0

花様年華の雰囲気漂うウォン・カーウァイの映像はよかった。それ以外は微妙。

71フラグメンツ(1994年製作の映画)

4.2

誰もが加害者になりえるという偶然性の問題、それを断片的なニュース映像と群像劇により炙り出す。たまたま録れたというマイケルジャクソンのニュースがパンチラインとなるその偶然も、この映画の構造を牢固たるもの>>続きを読む

アポロンの地獄(1967年製作の映画)

4.0

セックスの滑稽な本質を白日の下に晒すことで、人間の仮面もギリシア神話の神秘のベールも剥ぎ取る。オイディプス神話を現代の事件として一般化し、審判を下すパゾリーニの超越的な視座には詩人としてのパゾリーニの>>続きを読む

積木の箱(1968年製作の映画)

5.0

始めから終わりまでずっと面白い。青年期における肉体と精神の乖離、前のめりになる性的生活とフェティシズムへの目覚め。狂信的ともいえる誇張表現により、人間の原理的なものを描くことをステートメントとしてた増>>続きを読む

タイム・オブ・ザ・ウルフ(2003年製作の映画)

3.5

ハネケがキャスティングの時点で失敗していたというだけあって、確かに最後まで見るのが少し辛い作品ではある。世紀末的な景観にはグローバリゼーションもシンギュラリティも空無となりかけてる今、示唆的に考えさせ>>続きを読む

コード・アンノウン(2000年製作の映画)

3.9

無知による排除。暗号によって遮断されるコミュニケーション。移民問題を取り上げ断片化された群像劇として作り上げた「71フラグメンツ」と軌を一にしながら、各断片をシークエンスショットで撮影することでより深>>続きを読む

ルトガー・ハウアー/危険な愛(1973年製作の映画)

3.4

品のないユーモアな発想の数々には感嘆する。テンポもいいし放縦な喜劇として笑えるシーンも結構ある。でも愛と色情の刹那を演出するラストの展開はあまりにも強引でチープに映ってしまう。彫刻家としての感性のダイ>>続きを読む

カフカの「城」(1997年製作の映画)

4.0

未完である、ということそのものを主題にカフカの未完の小説である「城」を映像化してるとこに好感を持てる。この世の誰もがみな歩みを進めながらもどこに向かっているのか、何に接近しているのか、自分自身では分か>>続きを読む

召使(1963年製作の映画)

3.8

分かりやすい階段だけではない、主従関係の本質的な構造を示す記号的シークエンスに気品を感じる。終盤にかけて全体を煙たく包んでいく頽廃的なムードには相対的に引き起こされる情動を超えたカタルシスがある。

青少年のための映画入門(1974年製作の映画)

3.0

見るという行為は選択権の行使であり、視界に現れるもの全てをその瞬間に捉えることはできない。ということを三つの映像を同時に流すことで観客に自覚させる。フレームにおける引き算の美学を青少年は学べということ>>続きを読む

ローラ(1974年製作の映画)

3.0

VRコンテンツの現出を予見していた寺山修司。しかし実験映画を観るためにわざわざ映画館まで足を運ぶような奴が、果たして上映中にピーナッツなど食べるのだろうか……。

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)

4.5

ペアルックで子ども連れて遊んでれば幸福な家族に映る。その中身は代替可能だと言わんばかりのシークエンスには痺れた。像と像の交換可能性という観点で見ればアルトマンのイメージズの先駆的作品だったとも言えるし>>続きを読む

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