ばんてふ

鑑定士と顔のない依頼人のばんてふのネタバレレビュー・内容・結末

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

・こんなオチだとは全く予想できなかった。ぶっちゃけドンデン返しが必要かと言うとなかった方がうまく収まりがついたのではと思ってしまう。主人公は老人だが共感や感情移入をすることができた。
・主人公は頑固者。時間に厳しかったり、潔癖症だったり。ただ、肖像画を集めるときの手段の選ばなさは彼の譲れない部分なんだなと感じさせる。
・女性の肖像画を集めて眺めることが趣味で、女性経験のない主人公は、そういう経験が少ない。老人だがその点に関しては若者と変わらない。彼はクレアに冷たくされたり、意味深な行動をとられたりすると、悩み、ロバートに相談して、また頭をかかえる。ぱっと見何にも動じなさそうな老人だ狼狽えている。クレアと一緒に寝た時も一睡もできずに彼女を見続けていた。クレアとキスした時も顔に動揺が出ていた。何十年も生きていて、急に「初めて」のことが増えたのだ。
・彼はなぜ彼女に惹かれたのか。存在が謎めきすぎているからだ。彼女のことを知りたいと思うようになる。ドアの奥から聞こえてくる声だけを頼りに彼女の姿を想像する。とてもロマンチックだと思う。そして彼女が広場恐怖症だと知り、さらに好奇心が強くなる。そのうち、好奇心から好意に変わり始める。すると、ドア越しの関係がとても切ないモノに思えてくる。会いたいのに会えない。何としても会ってみたい。そんな風に思えてくる。
・予告を見たときは、この映画では彼女の姿を映さずに終わるのかと思っていたから、主人公が覗き見した時に映されたのを見てビックリした。もったいぶらないというか。とても綺麗な女優だった。
・彼が愛すようになったのは、彼女と関わることができる人間がごく少数で、自分が特別に思えたのもあると思う。そして、彼女から鍵を渡されたことがその意識を強くさせた。
・彼女と主人公は何度も衝突する。お互いに短気だからだ。ただ、それでも惹かれていったのは、彼女は彼に依存している節を見せ、彼もそれを求めていたからだ。彼女が姿を表すようになり、広場恐怖症が主人公のおかげで治りつつある話をしたり、他人に触れられないと言っていたのに、主人公に触れたり。この行動で彼は特別扱いされていると思い、嬉しくなったのだ。彼が愛せば愛すほど彼女が振り向いてくれる。
・「決して君を見捨てはしない」と彼は彼女を抱きしめる。老人が言うと現実味がすごくあるなと思った。老い先短いし。老人だからこそ、彼には彼女しかもう新たな出会いはないだろうというのもある。とにかく彼にとっては彼女しかいなかった。
・彼が廃人のようになってしまったのは、彼が最愛のクレアが姿を消し、人生をかけて集めたコレクションが全部消えたからだ。どっちか一方でも残っていたら彼に心の支えがあったはずだ。自分の譲れない部分だからこそ、失った時の喪失感はとてつもない者だと思う。
・ロバートのアドバイスで主人公は、自分らしくない感じでクレアにアプローチすることで相手を驚かすことにした。なんとなくわかる。
・「偽物の中にも必ず真実はある。」これが裏のテーマな気がする。ネットの考察の受け売りだけど。クレアが演技ではなく本当に彼を愛してくれていたらこの話はハッピーエンドと言ってもいいと思う。
・クレアのために予定を全てキャンセルする彼が青春っぽいなと思った。
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