TaiRa

嘆くな!のTaiRaのレビュー・感想・評価

嘆くな!(1970年製作の映画)
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ダネリアって「おもしろうてやがて悲しき」な作風で好きだな。

開業医の主人公が町にいるデタラメな奴らと酒呑んで、歌って、踊ってどんちゃん騒ぎしてる話。陽気な前半と寂しい後半の対比を春から冬にかけて、四季の移ろいと共に描く。主人公がお見合いさせられるヒロインがかわいい。みんなで歌い踊る中に彼女が加わる瞬間のショットが良い。基本的に単独アップからカメラが動いて、またはカメラを振って全体フルの構図に変えるみたいなのが多い。あと一つの芝居をワンカットで見せるのも多い。人物の動きをフォローする形で変に堅く決め決めにしたりしないのが特徴なのかな。フレームの出入りというよりフレームに入れ込むカメラワーク。フレームインでの笑いとかもある。あとフレームアウトで言えばラストの最後の晩餐。死期が迫る老医師の生前葬で巻き起こる狂騒と静寂、からの葬送歌。それを聴き涙を拭う男の手がレースのカーテンに触れ、そのままするりとフレームアウト。それを見つめる主人公のカットから窓際に切り返すと老医師はいなくて、カメラを振ると男は自室の暗闇へ消えて行く(=死の表現)。ここが凄く感動的。楽しさと悲しさを通過してまた新しい一年が始まる事を示して終わる。
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