Omizu

エレニの帰郷のOmizuのレビュー・感想・評価

エレニの帰郷(2008年製作の映画)
4.0
【2004年キネマ旬報外国映画ベストテン 第4位】
交通事故で亡くなったテオ・アンゲロプロスの遺作となった作品。テッサロニキ映画祭でプレミアされ、ベルリン映画祭でも特別招待作品として上映された。これまでとは違い、ウィレム・デフォーやブルーノ・ガンツといった国際スターを起用し、英語も多用されている。

前作はひたすらエレニの苦難の旅路を追いかけていたが、本作ではエレニのその後とエレニの息子である映画監督を同時並行で語っていく。それ故に分かりづらいところも多々あるのだが、これぞアンゲロプロス!という映像がたくさんで嬉しい。

特に面白いと思ったのはレーニンが死んで広場に民衆が集まった場面。群衆を上から捉え、儀式が終わると端っこから人々がはけていく。それだけなのに目が離せない。泣く人もいれば呆れたように去って行く人も。これだけで民衆の態度というものを存分に伝えきっている。アンゲロプロスは群衆と捉えるのが上手い。

絵になるシーンが多いのはいいことだが、時系列がこんがらがることがあった。霧の中でウィレム・デフォーとエレニが抱き合うところ、あれは夢って事?それとも実際に再会したときの回想?

アンゲロプロスらしくてとてもよく、外国人俳優を使って他の言語演出にも挑戦した気概が素晴らしい。彼の作品、もっと観たかった。本当に残念。
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