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ほとりの朔子のkoheiのレビュー・感想・評価

ほとりの朔子(2013年製作の映画)
3.5
《ひと夏の思い出 そして大人へ》

この映画の前半、二階堂ふみはそこまで可愛くない。ちょっとムスッとしてて、覚えたての化粧をしたような大人になりきれていない顔をしているから。しかし物語が進むにつれ艶っぽさが増していき、モラトリアム期間を終えた彼女は大人の女性へと変貌を遂げる。そこに二階堂ふみの女優としての始まりを垣間見た。


大学受験に失敗してフラフラしている朔子(二階堂ふみ)は、叔母(鶴田真由)の誘いで旅行で家を留守にするもう1人の伯母の家で過ごすことに。伯母の古い友人である兎吉(古舘寛治)、その甥の孝史(太賀)とも仲良くなり、楽しい時間を過ごすが、複雑な人間関係が展開していく。
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冗長だが以外と情報量の多い映画。見終わった瞬間すぐには理解できないメッセージがそこにはあった。なぜ複雑な人間関係を絡ませ、原発問題まで織り混ぜてきたのか。監督が"ほとり"に込めた思いを知ると少し理解が深まった気がする。

朔子は浪人生。「いわゆる何かの周縁にいる、子供と大人の言わばほとりにいる女の子の物語で、物語自体も海と山のほとりで起こります。」と監督は言うが、確かに今作は、子供ではないけど大人になりきれない時間を描いている。

やっぱり反原発デモのシーンが印象的。ドキュメンタリー映画作家の想田和弘まで出てきて驚いたが、それだけ反原発を訴える本気さが窺えるのに、実際描かれるのは、「反原発の立場の中にあるかもしれない内在的な矛盾」であり、これは大人と子供の狭間(ほとり)で疑問を持つ朔子の目線であり素晴らしかったと思う。

大人になりきれない時期って本当に難しい。将来に希望がなく走り出せない者もいれば、いろいろ考えすぎて行動に移せない者もいる。朔子がこの2週間で何を思い、どんな未来へ歩を進めるのか。物語の先を想像するのが楽しいが、ここはひとまず自分に置き換えて、さっさとモラトリアム期間を終えて動きださなければ。
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