かつを(@katsuwow)

鉄くず拾いの物語のかつを(@katsuwow)のレビュー・感想・評価

鉄くず拾いの物語(2013年製作の映画)
3.9
黄金町ジャック&ベティにて

2011年に報道されて大問題となった事件を、事件当事者の夫婦を主人公として撮影した映画。こういう趣向は、近いところでは「塀の中のジュリアスシーザー」があるだろうか。予備知識なさ過ぎた私は、最初はドキュメンタリーかと思っていたんだけど、最後にはドラマとして凄いなと唸ってしまった。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナに暮らすロマの一家。ナジフと妻のセナダ、そして2人の子供達。鉄くずを集めて微々たる日銭を稼ぐが
ある日セナダが流産してしまい、その治療に莫大なお金がかかることになるのだが…。

とにかく最初から最後まで貧乏で貧乏。ロマ達が住む村から街に出て来る時に原子力発電所と煌々とした灯りが流れ過ぎて行くのが切ない。

村に戻ったら電気代が払えなくて灯りが付かない。あらゆる事が連鎖のようにやってきて、子供達はいつも騒いでてイライラしてもおかしくない。(あまりに煩くて、私が怒りそうになったわ)そこをナジフは怒鳴る訳でもなく、諦めるのでもなく、妻を助けたい一心で鉄くずを拾う。

そして周りの兄弟達もお金はなくても知り合いが困っていたら助けるのが当たり前で、疑うことがない。これは救われる場面だった。

しかし、保険証が貰えるか否かは人間として生きられるか否かと同じくらいの重さ。最後には生きるためにある程度の危険を冒してセナダを病院に連れて行く訳ですが、貧困は続く、and so onである。

ナジフ、セナダ共に役者ではないけど、びっくりするくらい撮られてる意識がない。自分のストーリーを自分が演じる事の躊躇もなく、淡々と。それはある意味で強さを持つ人間の成せる技なんだろうなと思った。

それほど長くなく見やすい。
あ、ちなみに妊娠してれば煙草は辞めるべきでは?と思ったけどね。