勝沼悠

アクト・オブ・キリングの勝沼悠のレビュー・感想・評価

アクト・オブ・キリング(2012年製作の映画)
5.0
 1965年のインドネシアで共産党狩りによって100万人の命が奪われた。虐殺を行ったのはプレマンと呼ばれる青年団などの一般人だった。
 あれから50年。それなりの地位を築き、過去の虐殺を誇りさえするかつてのプレマン達は取材に応じるだけでなく、当時の再現映画を自らつくりはじめる。
 禁断のドキュメンタリー映画。

 自分達の虐殺を正当化し、自慢さえするブレマン達だが、この映画を見ると彼らが実は深層では深く傷つき苦しんでいるのが分かる。
 否認と心の闇の間で揺れる彼らは混乱し、終始支離滅裂な言動をしている。爺さん達のしょぼい再現映画撮影とあいまって、この映画は不気味な笑いを提供している。
 さらに彼らの残虐行為は社会に暴力の恐怖と不正義の横行を残し、本人達だけでなく社会に深刻な爪あとを刻んでいる。
 これはドキュメンタリー映画でしかできない。あの表情、困惑、混乱はドキュメンタリー映画でしか撮れない。2時間半を超える長い映画だが、どのシーンも重要で見逃せない、

 ドキュメンタリーでしか撮れない映画だが、そもそもこんな企画は狂気の沙汰だ。この映画は壮大な反則映画なのだ。

 私はてっきり再現ドラマを重ねてくことで彼らがある種の癒やしを得るのかと思った。だが、そんな生易しい心の闇ではなかった。彼らは明らかに壊れていってしまってるように見えた。
 彼らはその後どうなるのか。。。こりゃ続編の『ルック・オブ・サイレンス』も見ないわけにはいかない。
勝沼悠

勝沼悠