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サッドティーのmaiのレビュー・感想・評価

サッドティー(2013年製作の映画)
3.8
『「ちゃんと好き」ってどういうこと?』
っていう宣伝文句がこんなにもうまく機能するなんて…!
この言葉が全てで、逆にこの言葉を常に頭の中に留めておくからこそ、あっちこっちへと移動するストーリーの主軸にもうまく乗ることができました。

二股をかけてる映画監督とその彼女達。
彼女がいるけど、他の人に一目惚れして別れようとする冴えない男性。
アルバイトの女の子とそのバイト先の妄想強め店長。
昔アイドルだった結婚間近の女性と、そのファン。

今泉監督らしく、それぞれが少しずつ(今回はいつもより少し濃いめに)絡まり合って最後交差する人間関係がたまらないです。
最終的に、人間関係を答え合わせできちゃうみたいな。笑
リアルなようでちょっと非現実的な、その設定が本当に大好きです。

出てくるのは、柏木を中心としてる人間関係なのですが、彼のような人が一定数の女性にとって魅力的に映るのって分かるな〜と思っちゃいました。笑
全然イケメンじゃないし、オシャレとか一芸に秀でてるとかでもない。街中歩いてたら冴えない部類なんだけど、映画監督っていうちょっと特殊な役職を持っていて、その少しラフな言動って何割か増してカッコよく見せる要素になっちゃうんですよね。
だからこそ、観てる側としては「イケメンでもないし、そんなクズ切っちゃえよ…」とか思うんだけど、実際その立場になったら私も固執しちゃうのかもしれないなぁとか思いました。
そして、「ちゃんと好き」の哲学。
相手を傷つけちゃいけない。
自分の気持ちに嘘はつかない。
相手に失礼なことはしない。
どれも正しいんだけど、全てを叶えることができる恋愛は意外と真っ直ぐすぎて難しい…という矛盾。
自分にとっての恋愛における正しさが、相手にとって「ちゃんと好きな相手にとる態度」と受け取られるかどうかは悩ましいところですね。
そこには気持ちの軽い・重いもあるだろうし。でも、好きなことに変わりはないはずだから、「それって『ちゃんと』好きなの?」と改めて聞かれると「…え?」と一瞬固まってしまう気持ちもわかりますね…。
でも、この映画が切ない感じで終わらずに、どこかシュールさを持って終われるのは、みんなどこかズルいところがあるからなんですよね。
二股するんだけど、両方ともに二股の事実は告げているから罪悪感が薄かったり(そして、謎の誠実さも少しあったり)。
観てる側としては、一目惚れで振るか?しかも誕生日パーティーで!とか思うけど、好きかどうかもわからないけど会いたくなったからと正直に打ち明けたり。
二股かけられてる彼氏の友達に超ラフなおもてなしをしたり。
「ちゃんと好き」ならやっちゃダメな行動も、でもそれをやっちゃう気持ちがわからなくもないからシュールに映りますよね。笑

オチも特になしな会話が続くので、映画館で是非に!な映画ではなく、午後の何となく空いた時間に〜な作品なのですが、やっぱり今泉監督の描くストーリーとキャラクターって好きだなぁと感じた作品でした。

あと!青柳文子、やっぱり良い…!
演技は別に巧いってわけではないんだけど、あの幼さの残る綺麗な顔と、あの特徴的な声がとにかくクセになります。
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