えいがドゥロヴァウ

ホドロフスキーのDUNEのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

ホドロフスキーのDUNE(2013年製作の映画)
4.3
アレハンドロ・ホドロフスキー
『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』など70年代の超絶カルト映画を観た人は
おそらく誰もが彼が奇人変人、或いはとても気難しい芸術家なのだろうと想像することでしょう
僕個人としても寺山修司と関連付けられている部分は大きくて
インタビューなどでボソボソと喋る内気な感じの寺山修司のようなイメージを持っていました
が、そうではないということをこのドキュメンタリーは教えてくれます
オープンマインデッド
社交的な紳士
製作会社がつかずに企画が頓挫したSF超大作『DUNE』について語る彼の姿は
芸術としての映画に対して真摯で誠実で情熱的で
目がキラキラと輝いていて
子供のように無邪気で
陽のエネルギーに満ちておるのです
ホドロフスキーじいちゃんに沢山パワーをもらいつつも
それほど情熱を傾けられるものがない自分に物足りなさを感じて凹みました
(『DUNE』の企画当時のホドロフスキーは40代だったのだから、まぁまだまだ自分もこれからだべと慰めて回復)

絵コンテにメビウス
特撮にダン・オバノン
音楽にピンク・フロイド
悪の皇帝役にサルヴァドール・ダリ
造形デザインにHRギーガー
そしてオーソン・ウェルズやミック・ジャガーの出演
錚々たる面々です
それぞれを勧誘したときのエピソードがまたとてもとても面白いのですが
ホドロフスキーのスタッフやキャストを決める際の即断力にも驚かされます
僕は「超高精度な一目惚れ」と解釈しているのですが
ギーガーがダン・オバノンやメビウスも制作に参加した『エイリアン』の造形デザインで一躍名を馳せたように
この『DUNE』が彼らの創作における大きなターニングポイントとなったというのは
これはホドロフスキーが先見の明を持っていた、ということではなく
彼がスタッフ(彼の言葉を用いれば「戦士」)たちにビジョンを共有したうえで自由に創作をさせたというのが
結果として彼らの創造の花を開かせたのだなぁと
「映画の教典を作る」という途方もない野望と狂気のなかで
彼らに多大なる試練を与える場面もあったのではと思われますが
ホドロフスキーは人に敬意を示すことを惜しみません
そういった人柄が周囲を惹きつけ(家財を捨てて引っ越させたり)
この『DUNE』は映像化されずとも
数々の作家をインスパイアする作品になれたのですね

いかん
書きたいことがまだまだある
DVDの特典に収録されているカットされたインタビューも必見!
特にホドロフスキーと『DUNE』のプロデューサーであるミシェル・セドゥーが2人で街を練り歩きながら昔話に花を咲かせる様子は
とっても微笑ましいです
おそらくこの画は本編に入れるには良すぎて長すぎたのだと思います
(本編の構成をぶっ壊してしまうし)

「原作の映画化は結婚のようなものだ
花嫁の純白のドレス姿は美しいが
そのままでは子どもは作れない
ドレスを引き裂いてレイプするんだ!
私は原作をレイプしたんだ
愛を持って」

「人生では何か近づいてきたらイエスと受け入れる
離れていってもイエスだ
『DUNE』の中止もイエスだ
よし、やめよう!
それがなんだ?
だからどうした?
『DUNE』はこの世界では夢だ
でも夢は世界を変える」

ホドロフスキーの自宅で直接本人から作品の解説を聞いたニコラス・ウィンディング・レフン監督が羨ましすぎます