レントン

パラダイス 神のレントンのレビュー・感想・評価

パラダイス 神(2012年製作の映画)
3.8
一作目もそうだったけど痛烈です。
宗教の対立を夫婦という形の中でうまく表すとともに、信仰心の行く末を描いた良い作品だと思った。それと同時にそれらは宗教という大きな括りでも、夫婦という個人の括りでも捉えられるもので、明らかに行き過ぎている妻の心は醜かった。
人それぞれの信仰のあり方が存在するのに対しその極限たる姿は恐ろしく、悲しく、果たして本来の意味を持つのか疑問になる

夫婦は厳格な(ほぼおかしくなっている)キリスト教と一般的(より少し緩いかもな)イスラームで、これまでのアメリカ側とイスラーム圏の国々、あるいは米露に巻き込まれるような形となった中東圏の国々の行動と顛末が重なった。
歩み寄ろうとしていないわけではないがお互い的を得ず、事態は悪化していく。
終盤のロシアの女性とのやり取りにもそんな背景を感じてしまった。

お互いを知らず、知ろうともせず、教えようともしない。罪と救いを他人に押し売りし自分が神であるかのように振る舞う。そして何かが起きればただ主に従い救いを求め、終いには「行為」と自分の中での「信仰」が独り歩きする。もはや信仰ではなくキリストへの愛でしかないのかも知れない。

物語の結末は、この世界が示しているとすら思える。


けど一神教って何となく納得いかないなぁ、ユダヤ教とか特にだけど、どれだけ酷い目にあっても神が与えた試練とか神が決めたことと割り切って信じ続けられるというのはどういう理屈なのか、勉強不足でまだ分からない。途中の妻はキリストに近づきすぎて(近いと感じすぎて)傲慢な態度さえ見せるがキリスト教的にはそれどうなのか…。国が違うからかイスラームの夫も酒飲んでるし。
オーストリアの社会背景とかも分かればもしかしたらより面白いのかな、ロシア人女性の「この国じゃゴミ扱い」とか夫の似たような趣旨の発言も引っかかる。

撮り方は相変わらず好みでした、うまくできてて、中心に人物の背景を持ってきた安定した構図が印象に残ってる。
レントン

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