よーだ育休中

激戦 ハート・オブ・ファイトのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

4.0
落ちぶれた元ボクシングのチャンピオンは、借金取りから逃げながらジムの雑用係として働き、シングルマザーの親子が暮らすアパートの一室に間借りして生活していた。そんな彼の前に、不動産投資に失敗した元富豪の一人息子が〝総合格闘技の大会で勝てるように稽古をつけて欲しい〟と願い出る。


◆胸を打つ人間ドラマ!

主要な登場人物がみんな壮絶な背景を抱えています。つらい、つらすぎる。みんな悪い人じゃないのに身を置く境遇が苦しくすぎて居た堪れない。

☑︎ ジン・ファイ(ニック・チョン)
香港の元ボクシングチャンピオン。現役引退後、弟子が八百長試合に加担した挙句、濡れ衣を着せられて逮捕された過去(劇中終盤で彼の足枷になってしまう)をもつ。

☑︎ リン・スーチー(エディ・ポン)
破産して自暴自棄になった父を懸命に支える青年。父に立ち上がってほしい気持ちをぶつけるため、危険なMMAの大会へ出場することを決意。経験値の低さを不屈の闘志でカバーし、人気を博すが…。

☑︎ クワン(メイ・ティン)
夫に捨てられ、酒に溺れながらも女手一つで二人の子供を育てる母親。下の子供を事故で亡くしてから精神を病んでしまうが、それでも残された娘との生活を守ろうとする。

☑︎ シウタン(クリスタル・リー)
精神を病んでしまった母親を必死に支える幼い娘。小さい体で二人の暮らしを守りながら、同居人のファイにも次第に心を開いていくが…。

ゲームスタート!からベリーハードモードに設定されているみなさん。香港からマカオへ逃げてきたファイと出会う事で、それぞれの物語が動き出します。ファイ自身も、過去に弟子から裏切られた苦い経験を、スーチーという真っ直ぐな青年、そしてクワンとシウタン母娘との暮らしの中で、徐々に頑なだった心がほぐれていきます。

〝ファイ〟の字が表すように、各々の生活に〝輝き〟の兆しが見えたのも束の間。上げて落とす落差がエグい。どんな境遇に突き落とされても、決して挫けない意志の強さに心を揺さぶられました。


◆臨場感ある戦闘シーン!

重厚なドラマは非常に見応えがありましたが、格闘技のシーンも凄かった。過酷な特訓のシーンから、スパーリング、そして危険なゴールデン・ランブルの試合。普段から格闘技はあまり観ないのですが、選手達の気迫が伝わってきました。

特にスーチーの試合のシーン。彼がまだ駆け出しのルーキーというキャラクターだからこそ、ダークホースの様に持て囃されていても、立ちはだかる強敵との試合はハラハラと固唾を飲んで見守っていました。これはスポーツ観戦している時の感覚に近かった。映画でここまでの演出は見事でした。

スーチー試合で大怪我を負ってしまった時、フェイが言ったセリフが印象的なでした。

〝あいつは負けていない。
目的を果たしたんだから。〟

どんなに苦しくても戦い抜く事ができたのは、強い信念に他ならないのだと。少年ジャンプの作品で描かれているような事ですが、リアリティと重みが違いました。

弟子のリベンジマッチに燃えるファイが死傷免責に同意して、MMAにエントリーする展開もアツい。血反吐はきながら40の身体に鞭を打って戦闘モードに仕上げていき、見事弟子の雪辱を果たす。この師弟関係も熱い!寝技の稽古にかこつけていちゃいちゃしてるのはちょっとよくわかりませんでしたがw