ヘミングウェイの遺作。ということを知らなかったら、つまらないで切り捨ててしまうような作品。
むしろ、ヘミングウェイだと知って観ていてもなお、どこに魅力を感じて良いのか、ちょっと戸惑う。
というのも、劇中、二つのストーリーが走る。
作家と妻と、妻が連れて来た愛人の三角関係。
作家が描く、アフリカを舞台にした父親とのトラウマ小説。
この、二つともが、終始いや〜な気分になる内容なのだ。
結末も、アンハッピーエンドではないのに、全然ハッピーになれない。
狙われた後味の悪さなのかしら。
視覚的な面白さはある。パリ、南仏の風景。登場人物が髪を切ったり、染めたりすることがメタファーになっていること。ボーダーのカットソー。
だけど、キャストもいまいちパッとしない。キャストが良かったら、もっと評価できるのかも。カルメン・マウラとマシュー・モディーンの脇役だけが、ちょっと嬉しい。
ヘミングウェイ自身が、正面からエロスを追求したと語っているくらいなのだが、そこらへんも不十分。
妻とのベッドシーンはわりと力が入っているのに、愛人の方はスタイルの良さそうな裸体があまり映らないし、細部も描かれない。ミーナ・スヴァーリが脱ぎなれているからか?
そして、妻と愛人のシーンも必要だったと思う。
劇中劇の小説で嫌悪感を描く父親の性的な場面は、あの程度で適切だったと思うけど。
そんなわけで、理解しようとあれこれ考えてみたのも、原作がヘミングウェイだから。それだけだった。