つのつの

オーソン・ウェルズの フェイクのつのつののレビュー・感想・評価

4.1
フェイクでキャリアを始め、フェイクで業界を追われたオーソン・ウェルズの遺作が本作なのはアツいなと思いつつ、単純にこんな映画見たことない!という驚きに尽きる。
全部フェイクという危険な絶望ではなく、むしろ映像や音、脚本、ひいては物語そのものにとにかく操作を加えて、多重に意味を付け加えたくて仕方ないんだろうなという印象。訳がわからない状況も含めてポップな映画にしてしまう才能。「真実は人の数だけある」みたいなありふれたテーゼに収まる映画は、ここまで突き抜けてほしい。1970年代に既にこんな作品があるのたまから。
画面に映るオーソン・ウェルズは、本人のペルソナと本人の身体、キャラクターが最後まで一致し続けるにも関わらず、彼は最後にまた別の役を演じ始める。
「作者の署名なんてどうでも良い」という言葉を作家主義以降に放ち、メイルゲイズも地味に相対化してみせるなど、映画史家としての一面を垣間見れるのも興味深い。
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