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ダラス・バイヤーズクラブのevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

ダラス・バイヤーズクラブ(2013年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

【最期までcowboy】

当初AIDSが同性愛者間に限られた疾患で、HIVの感染率は高いと見られていた時代のこと。

主人公Ronは、電気技師をしながら、ロデオと賭事、コケインと買春に明け暮れるトレーラー生活を送っています。同僚の労災ついでにたまたま運び込まれた病院で、自身も軽蔑する「ホモがなる病気」AIDSと宣告されます。

彼が死の宣告を受けてからの変容は、「死を受容するまでの5 steps」そのものです。ヘテロセクシュアルな自分にこの病気はあり得ないと①否定し、診断した医師を②怒り、金を積むから新薬をよこせと③取り引きを試みます。銃を見つめて車内で涙し、④抑鬱状態になるまでの4段階は、殆どの人が経験する過程なのでしょう。但し彼の場合、5段階目は違いました。そのまま⑤受け入れるのではなく、生きてやるぞ、死んでたまるかと戦うのです。

国民皆保険ではないアメリカでは、気軽に受診出来ません。貧しい人は治験に参加する代わりに治療を受けたり、サンプル薬限定で特定の病院を無料受診したりします。(この是非はともかく、アメリカで治験の大規模データが取りやすいのはこのためです。)(追記:あぁでも現在は世界規模で…。)
Ronが金儲けで始めた未認可薬の密輸は、いつしかこういったシステムからもこぼれている人や、副作用で苦しむ可能性が高い今回の薬剤量に否定的な多くの患者達を助けることになります。そしてFDAに目をつけられる一方で、徐々に協力者も増えていきます。

Ronの未認可薬によってというより、飲酒や薬物を絶ち、栄養摂取とジャンキーな生活を是正するだけで、体調が回復した人もいるのでしょう。彼のビジネスは明らかに無責任で違法です。免許剥奪までされた医師だけが最先端の知識を持っているかのように描かれ、法律を犯さない医師が悪いかのような誤解を招きかねない描写には違和感がありました。

ある意味Ronはモンスターペイシャントです。そして疑問を抱いてもお上に逆らえない末端の臨床医も無力です。こういうやり方しかない歯痒い現実が見えて来ます。

偏見される側の理不尽さを経験し、ジェンダーを越え共に闘う同志として、RonがRayonを受け入れていく変化が素敵でした。

ちなみに警察官Tuckerが主人公の兄弟と書いている方がいましたが、地元の旧友だと思います。父親は明らかに別ですし、兄弟なら、主人公を中盤まで名字で呼ぶのは不自然ですよね(^_-)

それにしてもLetoが美脚で美人で、声も違ってびっくりしました。
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