尿道流れ者

野のなななのかの尿道流れ者のレビュー・感想・評価

野のなななのか(2014年製作の映画)
4.5
前作の「この空の花」のような荒々しいエネルギーやドライブ感は薄れたが、ゆったりとしていながらも以前より深いところに変わらない熱さがあり、とても良かった。

今回のテーマももちろん戦争と震災だが、前作よりも個人の悲劇にフォーカスが当てられていて、物語としても日常的で分かりやすい。ただ、輪廻の表現や生死の感覚が独特で戸惑うところもある。

愛も友情も裏切りも文学も絵もなにもかもが戦争に消えていく。しかし、そんな時代を生きる若者にはそれが青春だった。1人のお爺さんの死からそれらが浮き上がり、昔と今が繋がって、震災後を生きるということに繋がっていく。というところまでは前作と似た構造だが、今回はより個が主題となってるので、自分が生きるということをすごく考えさせられる。

そして、なんといっても安達祐実が良かった。子持ちであのイノセンスな感じが出せるのは恐ろしい。大林宣彦はロリコンの気があるみたいに言われるけど、それがうなづけるくらいに安達祐実の無垢なエロさが伝わってきた。常盤貴子も綺麗だったし、女子高生姿の時の合ってないカツラがまた素晴らしい。

演出は相変わらずでHOUSEっぽいシーンもあり、あからさまな合成映像ありと面白い。最初は会話のスピードがあまりにも早く、あまり噛み合ってないので戸惑ったが、その互いに一方的なコミニュケーションが徐々にスピードダウンし、最後にはお互いの話を顔を見ながら聴くまでにゆっくりになり断絶していたコミニュケーションが繋がる。このスピードの変化に泣けるし、ここにとても大きな意味を感じた。