ハルロック

そこのみにて光輝くのハルロックのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.3
事故で部下を死なせた罪の意識に囚われた男、達夫。
不倫関係と寝たきりの父の介護に縛られる女、千夏。

2人を取り巻く世界はどうしようもなく暗くて出口は見えないが、唯一容赦なく差し込む、千夏の弟・拓児の底抜けの明るさに救われる。
だからこそ最後に拓児が背中を向ける時、彼は何ともない顔をして去るというのに、こっちがやりきれなくて虚しさがこみ上げるのだ。

見ていて息苦しいほど鬱屈とした生と直面しているのに「死にたい」やつは一人もいなくて、むしろどうにかまた明日を生きてやる、という意志を感じるのは綾野剛、池脇千鶴を始め役者たち自身が放つ熱が相まってのことに違いない。

地位、お金、若さ、性。
身につけているあらゆる武器や言葉を剥ぎ取ったそこに残る、生きることそのものの力強さと美しさを信じたくなるような、眩い作品。