JIZE

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅のJIZEのレビュー・感想・評価

4.0
まず本作の魅力は100万円の当選を勘違する徘徊気味のボケ老人ウディと息子デビットが,ネブラスカまでの旅途中で,巡り合いや争いを通じ,真の親孝行を果たす"信頼の不可逆"部分にある。ER間際,ウディのあの言動を考慮すれば,冒頭日常会話と比較し息子に対する心情変化が確実に把握出来る。
またラシュモア山で発言『あれで完成品か?途中で放り出したように見える。ワシントンしか服着てねえし』や『入れ歯を線路に落とした』発言する不可解さ等,ウディの不変感に対する一貫した魅せ方が,非常に周到で,プロット自体が単純構成なだけに,個々の個性や世界観で体現する緻密さが非常に優秀。
ケイトの突き抜けた狂乱気質に対しても,墓場場面のあの発言で既に自明済みで,実際ウディ以上に狂乱精神の持ち主で今作中で1番個性高き人物だったんじゃ等,異質な波長一つで場面を一蹴する存在感はデビット以上にウディと対をなす相棒で気を利かせた毒舌や冗談か真面目か判断出来ない発言等,秀逸。
総評。悪因はデビットの静的個性で。ウディとケイトのボケ個性に圧倒された挙句,2人の間合いを図るがあまりに聞き手に回り過ぎた感はデジャヴ感含め否めない。ボケ2人の狂乱個性が根強過ぎてツッコミ(デビット)の正当主張や存在性が二の次になり,ウディに対し予定調和に協調する感は残念な部分。
デビットのあの元彼女に未練が残るダメさとかも,理由付けが無い分コメディよりに転化した印象。良因は当選した事を信じてもえない末,喧嘩に即転化する場面やいくら説明しても話が噛み合わず嫌悪雰囲気になる悪夢感等,奇妙さ全て。締め間際の円環的な冒頭との繋がりも非常に周到!オススメです‼︎
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