どらどら

家路のどらどらのレビュー・感想・評価

家路(2014年製作の映画)
4.5
- もう一回、やり直してえんだ

永遠に閉ざされた”家路”
永遠に拒まれた、”いえ”

“いえ”から拒まれたものが、
“いえ”を捨てたものが、
決して”いえ”に帰ることのできない思いを背負って
永遠に帰ることのないはずだった家路を辿る

それが仮にゆるやかな自殺だとしても
ここから、はじめる

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とにかく徹頭徹尾丁寧な作り込みで、ドキュメンタリーを観ているかのような現実感がある(話の作り自体は多少無理があるのに)
松山ケンイチ、内野聖陽、田中裕子、安藤サクラ、さらには山中崇という最強役者陣が固める

震災による喪失を、震災以前に喪失したものの再生へと逆説的に捉え直す試みは、内野聖陽•安藤サクラの(さらには光石研の)喪失の苦しみと交差しながら、松山ケンイチの肉体と生命力を漲らせる自然の姿を借りて見るものに問いかける
この社会は果たしてこれまでどう原発と向き合ってきたのか
事故以前も、以後も、我々はどう福島と向き合ってきたか
起こったことの本質は、なんだったのか

決して説教じみていないこの映画はあくまで家族の再生の物語である。
しかし、背景に積み重なる現実を知る我々は、さらには十年経っても何ら変わらない現状を知る我々は、物語の背景に堆積した真実の重みに押しつぶされそうになる。
松山ケンイチ演じる次郎の試みる静かな”革命”の意味を噛み締める。
母を背負って家路を行く彼の姿、田植えに2人で勤しむ姿には、言葉にできない何か神々しさのようなものさえ感じた
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