ヘソの曲り角

死んでもいいのヘソの曲り角のレビュー・感想・評価

死んでもいい(1992年製作の映画)
3.5
まず最初のシーンからヤバいよね。長回し主体のショットの累積で描かれるのはシンプルな浮気愛。なんかフィルムノワールで見たような話で良い。その長回しも固定のものから背後から登場人物を追い続けるスタイル、首だけくるんぐるん動いて室内でのキャラの移動を追うものまで多様にある。終盤の浴室から寝室に向けた固定のショットで音声から状況が分かるような演出もある。ドアポストから出てくる永瀬正敏の腕と大竹しのぶの会話もすごい。あれずっとフレームの外の空間に目線をちらつかせる大竹しのぶが良い。

通して見るとショットの力が強すぎてストーリーが薄くて求心力に欠ける。黒沢清周辺とやや似たような難点だと思う。時代特有のものなのかは知らない。何となく90分尺だと思って見てたのでけっこう長い印象を受けた。後半になるにつれてどんどん長回しを意識せざるを得なくなって話がぼやける。あとやたら小っ恥ずかしくなる永瀬正敏のセリフ回しは石井隆の世界観なのか時代性の反映なのか分からない。

MVPは室田日出男。あとワンシーンだけ出てくる竹中直人が不穏すぎる。