ヘソの曲り角

蛇の道のヘソの曲り角のレビュー・感想・評価

蛇の道(2024年製作の映画)
4.0
私が初めて黒沢清を知ったのはたしか2022年の夏、夜中に家でCUREを見たときだ。それ以来監督の映画は見てなかった。もちろん本作のオリジナル版もまだ見てない。

オープニングショットからかっこいい。その後のシークエンスは案外ぬる〜っと進行していくのだがその後の柴咲コウと西島秀俊の会話シーンで完全に違和感が顕現する。会話が成立してない。受け答えをしない相手にひたすら言葉を投げ続ける狂気(おまけに話しかけてる方が明らかにデリカシーがない)からくる怖さが途中から可笑しさに変わっていく。

前半結構笑えるのがやばい。寝袋ギャグが天丼してるの含めて面白かった。一人目がいいキャラしてる。うんこ漏らしたり二人目に監禁先輩風吹かしたり。二人目がけっこう曲者で、この辺のくだりはCUREみたいだった。二人目と柴咲コウの洗脳対決に思えた。ここで大事なのがダミアン・ボナールの役柄のショボさで、大事なこと全然事前に報告してないし全員の発言に踊らされるし急に脳みそとちんこ直結させるし、あいつの右往左往する凡庸さが滑稽でよかった。あとダミアンのキャラが設定後出ししまくってくるから都合よくね?と思っちゃうところもあるがそもそも黒沢清は画の強さ一点突破できちゃう作家性持ってるのであんまり気になんなかった。

三人目が一番ネックで、ここでかなり中だるみがくる。急に肉弾戦入れたり市街地の場面入れたり工夫はしてるんだろうけどこっから西島さんが出てこないからアクセントがないのよね。そもそも90分ないVシネを2時間弱まで伸ばしてるわけだし基本ワンシチュエーションの少人数監禁コントだし、いくら頑張っても中盤しんどいところが出てくるだろうけど…。

クライマックスの銃撃戦の緊張感はあれなんなんだマジで。「羊たちの沈黙」レベルでスリリングなカメラだった。全編通して銃声デカいのもいい。最後まで見ると肝が夫婦間の断絶だった。あと柴咲コウがブッ壊れちゃってるからオチが「メメント」ばりの殺戮の増産体制に入ってて不気味でよかった。

二人目捕まえに行く場所のロケーション抜群にいい。そのくだりの最後のショットが曲がりくねった一本道でタイトルどおりだった。相変わらず暴力が突発的に起こるので終始怖い。ダミアンと柴咲コウが共有してる幻覚で殺した奴らの死体がほげーっと口開けて地べたに座ってるショットが面白い。