原題「THE MOTEL LIFE」が表すように、本作は安宿を根城に生活するフラナガン兄弟の物語を描いている。
この兄弟は少年時代に両親を失い、その上「ある事故」で兄のジェリー・リーは右足の膝から下を失う。
弟のフランクは二人で生きていく為に14歳から中古車屋で働き始める。
養ってくれる保護者も無く、辛くて寂しい日々を送る兄弟の唯一の楽しみは痛快な冒険譚を作ること。
弟フランクがストーリーを考え、それを基に兄ジェリー・リーがイラストを起こして作る冒険譚は、まるでB級映画のようにワクワクして楽しい!
映画自体は重くて不幸なストーリーなのだが、この兄弟が作る物語がその暗さを緩和していると思う。
類は類を呼ぶではないが、フランクと恋仲になったアニーも不幸な家庭環境にいる。
お互いの傷を舐め合うようなカップルだったが、「ある事」を切っ掛けに破局を迎えてしまう。
何とか日々を過ごして大人になった兄弟に、ある日、運転中の兄が誤って少年を轢いて死なしてしまうという不幸に見舞われる。
事の重大さからその場を逃げた兄は、「轢き逃げ犯」として警察から追われる身となり、ここから兄弟の逃亡劇が始まる。
轢き逃げによって心身共に傷付いた兄を乗せ、弟フランクは未練が残る別れた彼女が住む街を目指す。
雪が舞い、凍て付くような冬の重い空の下で繰り広げられる兄弟のドラマは、終盤に向かうにつれ悲惨さが増してくる。
それでも兄弟の「終着点」とも言うべき街で、彼らは葛藤や苦悩の果てに何かを見出したと思う。
それを一言で表現すれば、お互いを思い遣る「愛」だと思う。
ラストシーンに漂う温もりや、一条の光のような希望が印象的だった。