MasaichiYaguchi

アゲイン 28年目の甲子園のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

アゲイン 28年目の甲子園(2014年製作の映画)
3.5
「ちゃんと負ける」には、日々努力して戦う時は全力を出し切ることが必要だ。
勝負に勝つことに越したことはないが、「ちゃんと負ける」ことで初めて前に進めることもある。
本作は、「ちゃんと負ける」ことで人生に新たな一歩を踏み出す人々を描いている。
長男が、リトルリーグ、シニアリーグ、高校野球と、足が故障するまで野球をしていたので、本作で描かれた一つ一つのシーンが胸に響く。
映画は、甲子園を目指していた高校球児たちが「後一つ」というところで、ある事件により夢を絶たれ、28年後に「マスターズ甲子園」でもう一度挑戦する姿を感動的に描いていく。
この作品は野球物ではあるが、中心には父と娘を軸とした家族のドラマがある。
主人公・坂町晴彦とその娘・沙奈美、そして坂町を「マスターズ甲子園」へ導く運営スタッフで女子大生の戸沢美枝とその父・典夫、この二組の親子のドラマが、仲間との友情、人生や夢に対する熱い思いを織り交ぜて展開していく。
久し振りに映画の後半から胸熱で観てしまった。
泣かせの壺を押さえた演出で先の展開も読めるのだが、それでも泣けてしまう。
それは主演の中井貴一さん、柳葉敏郎さん、和久井映見さんらの演技が素晴らしいのと、このベテラン勢の中にあって、映画の狂言回し役の美枝を演じる波瑠さんが若手俳優としての魅力を発揮しているからだと思う。
「一球入魂」、「全力の送りバント」という、野球ファンや経験者なら思わず胸が熱くなる台詞を鏤めた本作を観て、長男と久し振りにキャッチボールをしたくなった。