1957年のウィーンが舞台…。
古めかしい陰鬱な雰囲気のホテルで夜勤フロント係を務めるマックス(ダーク・ボガード)は、実は身分を隠して潜伏する戦争犯罪人…元ナチスの親衛隊員で、強制収容所にも関わっていた人物なのです…。
ある日、強制収容所で彼が性の奴隷として弄んだ少女ルチア(シャーロット・ランプリング)が、オペラ指揮者の妻となり客として現れます…。
始めは動揺し、彼を恐れていたルチアですが…
やがてふたりは狂気とも言える病的な恋愛に溺れていきます…。
何よりシャーロット・ランプリングが美麗…これほど"可愛らしい"という形容詞の似合わない女優は他にいないと思います…。若いですがとても洗練され知性を滲ませた麗人…作中でのベージュのコートがとても良く似合っています…。
物語は所々でナチス時代の回想シーンを挟みながらの展開…。
とても印象的なシーン…。
ナチスの軍帽に上半身裸でサスペンダー…細い両腕にはアンバランスのロンググローブ…ベリーショートの髪型…痩せていて少女のようでもあり、少年のようでもある肉体…ステップの度にクルクルと少女と少年が入れ替わります…周りのナチ将校たちを虜にするルチアは満足気に歌います…美しく…妖艶に…。
それと同じくひとりのゲイのバレエダンサーも裸同然で…慰め者を見つめるような仲間たちの目線に恍惚さを感じながら踊ります…美しく‥妖艶に…。
ナチの残党たちはルチアを殺すべく引き渡しを求めますが、マックスは断固拒否…彼らの倒錯的な愛は深まるばかりです…。
死や恐怖と隣り合わせのエロス…それを極限までに描いた作品…最もデカダンスな愛の形です。『ラスト・タンゴ・イン・パリ』が頭を過ぎります…。
偏執性、変態性が前面に出ていますが…実のところ、男女の濃厚でとてもピュアな究極のラブストーリー…。
タブーと分かりつつも相手の存在を求めてしまう…
それはナチスの軍服にも象徴されているよう…嫌悪感を感じつつも、最終的には何故か羨望の気持ちを抱かせてしまいます。
そして衝撃的なラストシーン…。
ふたりは愛を守り切れるのでしょうか?