JIZE

パージのJIZEのレビュー・感想・評価

パージ(2013年製作の映画)
3.3
パージ導入の必然が脚本上でコントロール出来ず暴走!!年に1度だけ犯罪が合法化され全てのサービスが停止する残酷な近未来背景と一家と犯行(パージャ)側の大激突を描くドタバタ内容の噛み合わない狭域的な調整加減に妙な違和感を覚えた。脚本の動かし方次第ではもう少しシステムの根底に流れる統治意義を問う分厚い作品になったんじゃと思えた。やってる事が全て名作『ホームアローン』の大人向け惨忍版と捉えるべきか。設定のハチャメチ感と裏腹に内容自体は非常に萎縮し閉じたお話です。

概要。監督は『アサルト13要塞警察』の脚本家ジェームズ・デモナコ。このジェームズさんは続編『パージ アナーキー』も務めるみたいなので今作の駄目押しを受け期待に拍車が掛かります。ついでに言えば主人公の氏名もジェームズで妙な関連性がありますね。製作費300万ドルな低予算ながら世界興収収入8000万ドルを超える大ヒットを樹立したスリラー本作。

先に今作結論を述べれば,犯罪率及び失業率を1%迄低下させ経済状況を改善し大衆がパージ導入をカタルシス的行事と崇めるが政府側の真の狙いは大衆をコントロールする為の施策であり"貧困層の撲滅"が目的という隠されたメッセージ性の連なり,要は設定の本筋は賞賛。ただ,それに対し展開する脚本の描き方がドンドン矮小化された方面に転がりパージ導入の必然性が割と弱まり後半部特に背景設定の魅力が全て打ち消されてたんじゃないだろうかと思う。設定は秀逸。内容は凡庸。という煮え繰り返らない設定とお話の歪み問題は冒頭以外でほぼ全編に渡り不快に感じた。

仮に内容を許容し中身を考察しても狙われる家族サンディン家を標的にする明瞭な必然性がなさ過ぎました。要は息子が良心を煩い青臭いホームレスを豪邸内に匿った以外の狙われる見え透いた理由が一切なく全てはあの息子が原因って比較的にま抑圧されたお話しになり全体像の集約が極めて低く矮小化される。70歩譲ってパージャ側の動機性もホームレスを受け渡さなかったから一家を攻撃したという短絡的な動機以外の理由付けがなく米国の義務やら祖国再生の祝福やら毒々しい感じは不気味なお面や武装からも全体的に醸し出されるがサンディン家を襲う明確な理由がホームレス解放の一極化に絞られ抜け落ち過ぎましたね。

物語の些細な偏差でも❶彼氏ヘンリーの扱い方が残務処理ていどの醜悪さ❷ゾーイの役割も必然意義を感じず尻ずもみ状態❸豪邸内の入口に仕掛けられたマルチアングルの監視モニターは『トゥモローランド』でフランク家を覆うあのシステムを連想させました❹ジェームズが家族を守る為にホームレスを尋問しパージャ側に受け渡そうと行動を起こす最中,家族全員から冷ややかな眼差しを受けお話が一旦停止する下りも展開に対する噛み合わせが悪く正直ダサ!!と思いました。❺今作最大のカタルシスはパージ導入じゃなくサンディン家のドアをチェーンでパージャ側がクレーン機か何かで強引に引っ張り上げ潰す描写だと私自身は思います。❻クライマックスで第三の刺客が登場する下りも絶望感を煽るドミノ形式で一瞬今作最大の転調場面か?と期待をよぎらせましたがお前らも所詮パージャ側と.....感とかも起伏なく退屈な印象。❼ERで各局に渡る民放放送をシークエンス的に配しパージデイから一夜明け社会情勢の現状をタラタラ述べる場面における改善されてない感とかは妙に納まりよく要はパージ導入により負(憎しみ)の連鎖は肥大化し暴力的な威圧で社会を破滅に追い込む反社会的な人間を増殖させる皮肉的な貧困層の怒りの表明。

従い,来月公開の続編『パージ アナーキー』で全てのシステム根底に至る真意が暴かれ政府側との直接対決に繋がる事を祈ります。続編続投によるイーサン・ホークの名前が出演クレジットを見た限り明記されて居らず心底残念!!自宅を総破壊された報いとして彼がパージャ側として再登場する事を願います。至近距離からのショットガン連打も最高でした。本当はヘッドショットを期待してましたが。色々述べましたが今作はサイレント感を誇張し過ぎた脚本に問題がありそうです。あと近未来の2022年設定も正直感じ得ずもう少しガジェット周りを固めても良かった気がしました。SF色を抑えたかったのか武装種類が拳銃やナイフのみなので。ノワールなエンタメ作品としては世間的に合格なんだろうな。今月18日の劇場公開時に不条理感やイーサン・ホークが好みな方は出来栄えを一旦差し置き是非,お勧めです!!
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