享楽

泣く男の享楽のレビュー・感想・評価

泣く男(2014年製作の映画)
2.9
「アジョシ」イ・ジョンボム監督の、またもや孤独な男による贖罪バイオレンスムービー!!
まず冒頭での切り口が突発的で非常に良い。アジアン・マフィアの殺し屋ゴン(チャン・ドンゴン)が任務遂行の為、敵が現れるであろう酒場で待機。1人の幼い少女と目が合い、ゴンが鶴の折り紙を作ってあげたり口から水をふざけて出したりして少女を笑かせる。そこにターゲットが現れ、ゴンはターゲットを追い負傷を負いながらも疾風迅雷の如く敵陣を射殺。付近の扉奥から音が鳴ったので条件反射的にそちらへ発砲。扉を開けるとそこには目に覚えのある鶴の折り紙。そして前方には少女。先ほど間接的に触れ合った少女…の胸元に銃弾、そして出血。不意にも罪無き少女を殺してしまったことでゴンは自暴自棄になり、酒に溺れる。そして次の自身の属する組織から言い渡された任務はなんと、殺害してしまった少女の母親だった…

といったところ。
総括して視れば特別面白くもなくつまらなくもなく…といったところ。主人公ゴンと、彼の標的となりまた彼が殺してしまった少女の母親であるモギョンの情緒的変化という側に注目すれば面白く、単純にサスペンスドラマとしての展開という側には少女退屈というか分かりにくさを感じてしまったかなと。

つまりですね、ゴンが少女を殺してしまったことにより罪の意識に苛まれ、組織に任務として託されたモギョンを殺すか贖罪を継ぐなうのかという葛藤 そして贖罪を継ぐという選択肢を取った彼のモギョンに対するアプローチの仕方辺りは注目に値するんですが、それ以外の人物はキャラクターとして単純わかりやすく、そのキャラクター性からこれから彼らが取り得るであろう行動があまりに容易に予測がついてしまうんですね。
さらに作品のクライマックスであり最大の見所なのであろうラストのゴンとチャオズのバトルシーンそのもの自体のスペクタクル性は高いとは思うんですが、彼ら二者間における情緒的関係性が希薄な為、イマイチ乗れないんですよね。
ただ劇中を通じてゴンを寡黙な男として演出することで、罪の意識に苛まれる苦痛や贖罪を果たす過程における回想シーンによる彼の過去の経験ゆえの現在の苦痛の演出は際立ったものになったと感じ、そこは良かった。
この内容なら、敵陣同士によるやり取りをギリギリまで削って、何のカタルシスにも発展し得ない金銭のやり取りなども削って90分映画にできれば良作なんじゃ?と疑念を抱いてしまっただけに残念…
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