尿道流れ者

5つ数えれば君の夢の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

5つ数えれば君の夢(2014年製作の映画)
4.5
心のどの引き出しにも収まらない歪で魅力的な映画。感動的であるような、勇気付けられるような、蠱惑的であるようで、それらではないような。

映画では言葉が滑っていく。哲学的でポエミーな長台詞。意味上にある言葉を羅列していくと、その一文は人の心理や真理を現しているようで、それ以上やその裏にある別の神秘的なるものが見えてくる。その空気感がこの映画の世界観を構築している。言葉が耳を滑り抜けていくなか、肉体に宿る神秘性が顔を出す。その肉体にある神秘性がダンスという最高の形で表現される。異物感のあるダンスが徐々に神聖な表現に変わるシーンはとても素晴らしかった。

女子校という閉ざされた狭い空間のなか、少女達は一方的な憧れを持つ。それは男に対してでもあり女に対してでもある。痛みを負えば必ず実が成るというわけではない。その痛みに喪失を覚えるか、その所有を知るかで行き着く先は限りなく違う。憧れをただ追うものか、共犯者となるか、それは多大なる実感の差に行き着く。

痛く痛く痛々しい少女達の密かな挫折と栄光。それぞれが成功と引き換えに大きな何かをも損失している。ただそれが胸をうち、観ている自分に浮き足立たせる。
少なくともこれを観ている間、僕は精通を経験していない状態に戻っていたし、それが損失なのかそれとも何かを得た状態なのかは分からないが、あまり他に得られない経験だったことは間違いない。