三樹夫

X-MEN:フューチャー&パストの三樹夫のレビュー・感想・評価

X-MEN:フューチャー&パスト(2014年製作の映画)
4.2
未来、ミュータントを狩る機械が暴れミュータントたちが追い詰められている。未来世界は荒廃しており完全にディストピアだ。世界がこうなってしまったきっかけは1973年にミスティークが新たなナチスみたいなおっさんを暗殺したことにあった。暗殺は成功したがミスティークは捕らえられてDNAを採取されミュータント狩り機械へと利用された。精神を過去へ送り込めるミュータントがウルヴァリンを1973年に送り込みミスティークの暗殺を止め、世界を変えようとする。
思いっきり『ターミネーター』のような話だが、1973年にタイムスリップしたウルヴァリンが裸から始まるのは『ターミネーター』を意識した演出だ。『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』は舞台が60年代というので映画のルックも60年代風だったが、今作では舞台が70年代ということでルックは70年代風になっている。現代史の裏にはミュータントありのX-MEN史観も踏襲され、実際の70年代と絡み合ってくる。また『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』はエリックがマグニートーになる話でもあったが、今作はチャールズがプロフェッサーXになる話でもある。

ミュータントは被差別者やマイノリティーのメタファーであり、また迫害されることがより強調されている。被差別者やマイノリティーが迫害される世界はどうなるかというと、この映画みたいなディストピア未来になるということだ。被差別者やマイノリティーだけではなく、マジョリティーに属する人間も平気で迫害されていく。マルティン・ニーメラーの『私は声をあげなかった』の詩の中の世界が行きつくところまで行き、最後は誰も残らなくなる。
ミュータント穏健派のプロフェッサーXと過激派のマグニートー、そして復讐者のミスティークという構図になっている。足に包帯巻かれるシーンで間接的にヘイトを受けるミスティークの心情を思うと涙を禁じ得ない。

今作でも様々な能力を持ったミュータントが登場し、工夫をこらした能力バトルが見られる。ゲートを開けてテレポートさせる能力を持ったミュータントはサポート専門かと思っていたら、カウンター攻撃をしかけたり、ゲートに敵を挟んだ状態で閉じる『HUNTER×HUNTER』のノヴの窓を開く者(スクリーム)みたいな戦い方をする。さらに高速移動ができるミュータントは、高速移動って戦闘型の能力じゃないよねと私舐めてました。めっちゃ強いやん。個別の能力を活かしたバトルを工夫しているのが分かり観ていて楽しい。ただ能力の強弱の差が耳キーンレベルであり、マグニートーの能力強すぎやろとなる。俺の自然治癒能力なら何十年前へのタイムスリップの精神ダメージにも耐えられるというガバガバ理論だったり、水滴ある所で高速移動は死ぬぞ(『DARKER THAN BLACK -流星の双子-』で得た知識)など、結構勢い押しみたいなところがある。

チャールズとエリックのBL感は『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でも高かったが今作ではより増しており、エリックがチェスでもしないかと持ち掛けるの萌える。そして結局2人でチェスするのは激萌え。
三樹夫

三樹夫