くるみ

ルパン三世のくるみのレビュー・感想・評価

ルパン三世(2014年製作の映画)
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「日本映画の未来に貢献したいあなたが『ルパン三世』を見るべき、たった一つの理由」という啓発書みたいな感想です。興味のある方はどうぞ。

ずいぶん国際色が豊かで、セットやロケにお金のかかった映画だと思いました。
本作の製作費は15億円程度のようです。この金額が効率がいいのか無駄が多いのかわかりませんので、試しに今年、日本で公開されたハリウッド映画のうち、近い金額の作品と比べてみます。
「ロボコップ」が10億円、「ネブラスカ」が14億円、「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」が18億円、「ブルージャスミン」が19億円です。少額で豪華に見える映画も、逆もあります。「フライト・ゲーム」55億円など、上を見たらキリがないけど。
邦画では、同時期公開の「るろうに剣心」が2本で30億円です。「るろ剣」が前後編になったのは、原作の京都編が長いことのほか、2本公開なら製作費が回収できると見込んだからでしょう。'11年の「GANTZ」も2本で40億円です。
どちらにしても、企画段階から期待よりも不安の大きかった本作にしては、大きな金額を扱ってます。回収できるのかなって怖くなりました。

映画製作費については、最近、町山智浩さんのラジオでも取り上げられていました。いわく「映画の採算分岐点は、製作費の3倍。現代のハリウッド映画は北米市場だけでの収益回収は目論まず、海外、とくに映画ブームの中国市場に訴える作品を作っている」そうです。
参考 http://miyearnzzlabo.com/archives/19222

日本映画は、国内公開だけを考えて企画や予算を立てると聞いています。日本から積極的に海外市場に売り込みを行うことは少ないそうです。言語やノウハウの問題があるのだと思う。
しかし、「ルパン三世」は、日本のほか、台湾、タイ、シンガポールなど23の国と地域で公開されます。日本人以外の有名俳優の出演が多く、作中舞台をタイなどにしたので、売り込みがしやすかったのでしょう。また、VFXは韓国のチームが担当していますし、北村龍平監督はハリウッドでも一定の評価を得た方です。
つまり、本作はもともと、日本だけでなく海外での公開を前提に企画を立てたんじゃないでしょうか。収益を上げやすいからです。

映画はお金だけのために作るのではないけど、お金がないと映画は作れない。いくら日本が豊かな先進国でも、人口にも映画館の数にも限界があります。今の経済動向からすると、ますます映画のパイは縮小していく。このままでは、日本の映画文化は衰退してしまう。
という危惧があったのかは知りませんが、本作は「海外でも成功した日本映画にしたい」という希望を持って作られたのだと、私は勝手に考えました。「ルパン三世」が海外進出のモデルケースとなれば、あとに続く映画は確実に出てきます。また、国際交流によって技術面などの進歩もあるはずです。
従って、もしこの想像が当たっていたら「ルパン三世」のヒットは「興行収入が多い」という金銭面以上のメリットがあります。日本映画界全体にとって、です。
だから、メインテーマの使用を許可しなかった日本テレビについては「イメージに泥塗りたくなかったのは、仕方ないね」ではなく「パイの奪い合いをしている場合かー!」という気分になりましたね。とばっちりかもしれませんが。

肝心の内容ですが、上映中こんなこと考えてたくらい、脚本や演出にはつたなさがありました。でも、迷っている方の後押しになればと、私が良いと感じたところを書いておきます。

○エンディング
……本当は、スタイリッシュな映像って書きたかったんですけど、冷静になると「スケールが大きい、凝ってて格好良い」と「やりすぎてクドい、ダサい」が半々くらいです。スローモーションの多用とか。でも、こういうこと考える悪い意味でこなれた観客向けには作られてないから、見当違いの指摘な気もする。エンディングはシンプルに楽しめました。本編映像のスタイリッシュさをぎゅっと押し込んだつくりで見応えあります。
○感動強要描写がなかった
いわゆる、お涙頂戴場面がなかったです。ルパン側の人間の死もあるのですが、ドライに描いてましたし敵にも手加減してません。全体のバランスからしても良かったです。
○峰不二子役の黒木メイサが、きれいかっこいい
小栗旬にも玉山鉄二にも台湾アイドルにもイマイチ乗れなかったので、私が注目してたのは不二子ちゃんです。黒いボディスーツで登場して、バイクに乗ったりドレスを着たり裏切ったりします。ルパンを部屋に呼んだときの、鳥のようなシルエットのワンピースが一番好きです。お洋服は他の登場人物も凝っていて、ルパンのジャケットの生地をビロード調、パンツの素材を革にしたのは、高級感が出てたいへん良かった。
そして、不二子ちゃんにはキャットファイトがあります! 予告に泡風呂シーンが映ってましたが、あのあと白いバスローブ姿で敵の女性キャラと戦います。女子の肉弾戦、いいですね。戦っているときの髪のなびき方も美しい!
2014/09/03
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