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チョコレートドーナツのyoccoのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
4.0
既にネタも一流役者も出尽くしてしまった感がある映画界。
その上、不景気の影響で保守的になりスター俳優の乱用や過去の大衆向けヒット作の二番煎じな作品ばかりな昨今。

そんな中、こちらは久し振りに涙なしには観れない、役者の魂を感じられる、二番煎じ感が薄い社会派なヒューマンドラマでした。

本作は70年代、ゲイカップル、人種差別、ダウン症、法廷物、社会派という、イメージがやや重ためな題材のため本当に映画が好きな人じゃないと手に取らないタイプの作品だと思います。
観てしまえば重たい話ではなく、かなりライト級なのですが。

個人的にはまだこういう地味目な作品をしっかりと作ってくれていることを本当に嬉しく思います。

この作品の何がいいってやっぱ役者。
ストーリーは実話なだけあって脚色には限度がある。つまり、ストーリー自体はよくある話なのに作品に唯一無二の存在感を与えたのはやはり配役の妙でしょう。

一人のダウン症の少年のために人生をかけて闘ったゲイカップル。
このカップルを演じたアラン・カミングとギャレット・ディラハントが本当にいい仕事してる。
ギャレットはなんかごく普通の中年男性といった感じで宙ぶらりんな印象を受ける地味な役者さんではありますが、強烈な個性を感じさせるドラァグクイーン役のアランの色物俳優ぶりに全く負けてないあたりが普通にすごい。
普通なら食われるわ。

個人的にはドラァグクイーン物で大好きな『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』を思い出さずにはいられなかったのですが、あれのマイケル・ピットはジョンに完全に食われてた。
ピット君も繊細な役をやらせたら凄い役者なのに完全に食われてた。ジョン・キャメロン・ミッチェルが凄すぎたんです。

この作品は多分ドラァグクイーンを前面に出してきていないから役者のバランスが保てたのかなと思います。

ただ、1つ残念なのはアランがたいしてお歌がうまくなかったことですね(笑)
声は綺麗なんだけど音はずすから歌うま設定には無理があった。
あの声質ならブルースよりパンク向きだと思ってしまうのでお歌のシーンは違和感がすごいです。
『オペラ座の怪人』のジェラルド・バトラーばりの違和感です。

そこが惜しいかな、ってかんじなのとやはりストーリーはありきたりなため評価は4にしておきますが、かなりオススメな作品です。
ラストあたりになったらハンカチ用意した方がいいですね。
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