黒田隆憲

チョコレートドーナツの黒田隆憲のネタバレレビュー・内容・結末

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

公開当時、予告を観て気になっていたのにそのままにしてあった。今回ようやく観賞。LGBTに関するコンプライアンスやこちらのリテラシーがこの8年の間に著しく変化(敢えて「向上」とは言わない)したにも関わらず、違和感なく受け止められるのは作品としてそれだけ完成度が高いということだろう。ただ、舞台は1979年、同性愛に対する偏見が今よりもっと酷かった時代の話ということもあって、悪者は徹底的に悪者として描かれており、その「リベラルvs保守」の善悪構造が若干薄っぺらく感じてしまってそこは残念だった。

主人公ルディ(アラン・カミング)とその恋人で検察官のポール(フラガー・ギャレット)はもちろん、ダウン症の男の子マルコや、マルコの担任教師フレミング(ケリー・ウィリアムズ)ら、「善人側」の人たちがとにかく魅力的で、物語前半〜中盤のまるで御伽の国のようなただただ優しい世界は、終始涙腺が崩壊していたのだけど、その分、後半からラストに向けた過酷な展開には胸が押しつぶされそうになった(あの、画面に出てくるだけで胸糞な気分になるポールの上司な……)。

ラスト間際、公判で負けたポールが黒人弁護士ロニー(ドン・フランクリン)に「正義なんかこの世界にないんだな」とぼやくと、「法律学校でまず、そう習わなかったか? それでも闘うんだ」と返したシーンが印象的だった。
黒田隆憲

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