ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によって周到に仕掛けられたワナに見事にハマりました。以来、何回も繰り返し観てしまっています。
子供の失踪事件を描き、不安や恐怖感を絶えず与え続けられるサスペンス。映像は無駄なく美しくて音楽も印象的で、刺激の強いシーンは控えめですが、不穏な重低音が響いてずっと不安を掻き立てくるのです。
『セブン』('95)のように作りこまれたダークな世界観はなく、『羊たちの沈黙』('90)のように現場に行かずして真実を暴く天才なサイコパスもいません。
現実味のある世界観で、どこにでもいそうな登場人物たちに起こった子供の失踪事件に、最初はまるで自分ごとのように気持ちをシンクロしていました。
ただ、そんな感情移入もつかの間のこと。失踪した娘の父親を演じるヒュー・ジャックマンが見せる狂気じみた暴走に突き放されてしまいます(こんなヒュー・ジャックマン見たことないよ…)。
そして、もう一人の主要人物。失踪事件を担当する刑事を演じたジェイク・ギレンホールもさりげないですが素晴らしい演技でした。
物語ですが、全編にちりばめられた伏線を結び付けていくと全体像が浮かび上がっていくのだと思いますが、一度見ただけではわからないかもしれません(わかりませんでした)。それでも見応えは十分で楽しめることができます。
のちのち見直せば、“神父”とか“第二容疑者”などの“??”は解消されると思うので“二度おいしい作品”と割り切ってみるのがよいと思います。勘の良い方は一度で全部わかるのでしょうけど…。
特に印象的だったのは、最後のほうの雨の降りしきる中、刑事(ギレンホール)が車に乗って爆走するシーン。まるで全ての流れはここに向かって集約されているようなエネルギーが感じられ、クライマックスにふさわしい盛り上げ方だと思いました(行けーーー!)。
『ボーダーライン』('15)、『メッセージ』('16)、『ブレードランナー 2049』('17)を始め、『DUNE/デューン』3部作('20〜)といまだハズレのないヴィルヌーヴ作品(私的には)。ヴィルヌーヴ監督の次回作品である『デューン/砂の惑星』のパート3が楽しみです。