Yoshishun

ジュラシック・ワールドのYoshishunのレビュー・感想・評価

ジュラシック・ワールド(2015年製作の映画)
3.5
“シリーズ史上最強のツッコミ映画”

『ジュラシック・パーク』の惨劇から約25年後。
パークの施設は再利用され、新たに“ジュラシック・ワールド”として進化した――!
関係者の事故死が相次いでおきながら、また人類は同じ過ちを繰り返すのか?と考えざるを得ない新3部作の第1章。

2015年といえば、往年の名作が続々とリブートされ、大作の続編公開ラッシュが目立った年だった。『マッドマックス 怒りのデスロード』『ターミネーター新起動』『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』と同じ年に公開され、その年No.1ヒットを飛ばし、覇者となったのが本作だ。
やはりオリジナルシリーズの知名度、ファン数からして大ヒットは間違いなかったのだろう。しかし、決して出来が良いとは言い難く、シリーズ屈指の迷作といっても過言ではない。

冒頭は嵐の前の静けさのように、のんびりした日常パート、そしてやたら説明過多なビジネス会話が飛び交う。前作までの惨劇が忘れ去られたかのように開き直り、例の敷地内に再び恐竜観光施設を作り上げた。更に今度は様々な恐竜の遺伝子を組み合わせたハイブリッド種を登場させ、元々シリーズにあった人工物としての恐竜の脅威を再び描いているというわけだ。これに異論は無いしそれでこそジュラシックパークではあるものの、設定は完全な焼き直しである。この時点で、その後の展開もオリジナルと同じなのではないかと大方の予想はつく。

あの1作目の革新的な映像世界は期待できない。しかし、CGが進化に進化を重ねた結果、蘇った恐竜達はヌルヌル動くし、旧版では表現の難しかったラプトルら小型恐竜の俊敏さやリアルさはかなり増した。ましてや、人間と疎通できるハイブリッド種という存在は、旧版から続く人工物である生物に、他の生物と同様に生存する価値があるか、人間と共存できるのかというテーマに沿っており、今後の続編2作がどう描かれるのか想像が膨らむ要素だ(ただシリーズを重ねるごとに評価が落ちてるのが気がかり)。

さて、本作の楽しみ方としては大きく2点ある。
1点目は普通にファンムービーとして楽しむということ。劇中で第一作に登場したT-REX、キャラクターとしては憎きアジア系科学者も再登場する。また、大筋はシリーズ王道なので、お約束の描写も往年のファンなら笑いながら鑑賞できるかもしれない。
そして、2点目。これが大事なのだが、本作はツッコミのオンパレードなので、皆でツッコミながら楽しむという鑑賞が1番合っている。相変わらず敷地内の管理は杜撰すぎるわ、ビジネス面ばかりを重視して客の安全性そっちのけになるわ、登場人物たちの行動に呆気に取られるわ、中盤の大惨事パートからまあ酷い酷い。極めつけは、大型の肉食恐竜が敷地内を彷徨いているというのに、鎮圧部隊の武器は何故か接近戦向きのものばかりだろう。案の定電気槍を刺しに行こうとして無惨に食べられていく隊員達には笑いが止まらなかった。また、妙なタイミングでのロマンスシーンもハッキリ言って蛇足であり、どこに惚れる要素があったのか疑問しか残らない。
他にもまだツッコミどころはある。予告でも出ていた全身ガラス製のボール状の乗り物も、安全面を考慮したらあまりにヤバすぎる。ステゴザウルスの軽めな一振りでヒビが入る時点で耐久性はたかが知れている。それに操縦するお兄さんも施設の警告アナウンスをガン無視し自ら命の危険を晒しに行くという阿呆さも素晴らしい。
また、翼竜が頭上をじゃんじゃん飛び交う下で高所から大声で叫ぶシーンも忘れ難い。何故全く捕まらないし食べられないか?それはヒロインだから。
あとヒールで全力疾走は滑稽すぎる。

とまあ色々言ってきたが、作品としては欠陥だらけの大作といった印象で、よくスピルバーグもこれでGOサイン出したなとも思える。しかし、金がかかっているだけありオリジナル版の映像革命という点は継承されている程に、CGの出来は素晴らしい。もう少しストーリーや設定の練り込みができていれば、オリジナルに引けを取らない傑作になり得ただろうに、何ともお馬鹿映画にしか見えないシリーズ序章だった。
お次は当時シリーズ最低と評価が大荒れだった『炎の王国』に挑むとしよう。
Yoshishun

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