おしりハートのねこ

インサイド・ヘッドのおしりハートのねこのレビュー・感想・評価

インサイド・ヘッド(2015年製作の映画)
4.8
数年前に初めて鑑賞した時も大好きで何回も繰り返し見た本作。
久しぶりに鑑賞したけどやっぱりすごく好き。

「いつでもポジティブでいましょう」「嫌なことをされても怒るのは時間の無駄です。『かわいそうな人』と憐れんであげましょう」「嫉妬するなら、その妬みをエネルギーに変えて努力しましょう」
みたいな格言?というか思想をよく見かけるけど、正直言って、私はそういうの大嫌いです。確かにそういう考えのもとで行動することで救われる時もあるけど…それが誰にでもいつでも通用すると思わないでほしいというか。

 私はもともとネガティブな人間で、いつでもポジティブでいられるほど強くないし、嫌なことをされたら「ムカつく、〇ね!」と思うし、嫉妬して劣等感に落ち込んで消えたくなる日もある。
ネガティブな感情を無理やりポジティブに変換することなんてできないし、落ち込むのをやめたくてもやめられないときだってある。
ネガティブな気分に浸ることを「時間の無駄」や「気持ちの切り替えができない未熟な人」と定義して切り捨てるような言葉や思想を見かけるたびに、とてもモヤモヤする。
 この社会では、ネガティブな感情はただ否定的なものだと捉えられていることが多い。「自分の機嫌を取っていつでもニコニコご機嫌でいられない人」は未熟でダメな人間だとされている。
でも、この映画はそんな社会で生きづらさを感じてる人を救ってくれると思った。
 体に怪我をしたときは、痛みを感じることで自分の体の傷に気づいて、それから手当をして、治癒期間やリハビリを経て健康な体に戻る。それと同じように、怒り、悲しみ、ムカムカ、ビビリといったネガティブな感情たちも、自分の心の傷に気づかせてくれるきっかけとなる。わたしたちの心にとって実はすごく大切で必要なものなんだ、ということを教えてくれる。

最初、ヨロコビはカナシミを小さな円の中に閉じ込めてしまう。そのほうがライリーにとっていいと考えたから。
そして、悲しくても自分自身の悲しみを押さえつけて、明るく振舞おうとするライリー。しかし、それはことごとく失敗する。
「ネガティブな感情にならず苦しい時もポジティブで明るく居ること」はとても難しいこと。
そうではなくて、「ネガティブな感情になる自分を許して、それからゆっくり休んで、立ち直っていくこと」が大切なのだと思う。
ネガティブな気持ちになるのはごく自然なこと。喜びだけではなく怒りや悲しみ、イライラ、ビビリのことも全て大切にしてあげたい。

最後、イライラがイカリを煽って、イカリの頭から噴き出した炎で司令塔のガラスを割るシーンがとても示唆的だと思う。
あれは「ネガティブな感情が突破口になることもある」ということの比喩だと思う。
ほかにも、感情たちの行動が何を表現しているのか、考えるのもとても面白い。

それから、最後コアメモリーがブルーに染まってくの、成長の過程で多かれ少なかれ起こることよなあと思った…。もう戻れはしない、幸せで人生に悩むことなんてなかった小さな頃の思い出は楽しいと同時に、いつもどこか切ないものでもあるから。

そんで、ビンボンが忘れ去られるシーンはいつも泣ける🥺🥺ありがとうビンボン…