けーはち

アーロと少年のけーはちのレビュー・感想・評価

アーロと少年(2015年製作の映画)
3.8
恐竜が滅びなかった世界──恐竜は農耕や放牧を営み、その種類が違えど「恐竜同士で通じる共通語」を話す。原始人である人間たちの方が言葉を持たず、野犬程度の知能で生きている。兄弟の中で、ひときわ小さく臆病な末っ子の恐竜アーロは、父親の言いつけ通り、作物を荒らす小動物を捕まえたのだが、殺すことができず……。

★玩具箱や扉の向こうの架空のモンスターの世界、ゲームの中の世界、そして“頭の中(インサイド・ヘッド)”と、子供の内的世界への旅路を終えたディズニー・ピクサーは、久方ぶりに、恐竜とともに原始の大自然へ。なんと恐竜が主人公で、人間がオトモの小動物、忠犬ポジションという、皮肉めいて斬新な設定!

★平野の果てに山嶺が連なり、そこから荒々しく川が流れるアメリカ西部のような風景。バッファローの群れを追い込むTレックスはカウボーイをモチーフとしている。つまり、本作は恐竜を開拓者に見立てた西部冒険活劇だ。種族を超えた友情や家族の絆を守るため、臆病者が勇気を出し、厳しい自然と対峙し、あるいは平穏を脅かす邪悪な外敵に立ち向かう。よくある筋立てであるが、そこは大横綱ディズニー・ピクサーのCGアニメ最新作。水の流れて泡立つ様子、複雑に凸凹のついた岩肌、陽光の中で揺れるトウモロコシ、何もかもを飲み込む絶望感を伴う濁流──実写と見紛うばかりのとてつもない美麗CG世界で、カートゥーンそのものなキャラクターがぴょんこぴょんこ動く世界最高峰のアニメーション技術。さすがと眼を見張るしかない。できれば3D上映で見よう。

★ところで本作の妙味は単なる横綱相撲じゃない所にあって、恐竜と人間との立場逆転というギミックで観客を苦笑させた上に、子供をビクッとさせること請け合いのショッキングな要素あり、また発酵して(?)アルコール成分のある何かを食べて××××する描写あり。おいおい、そういうのはドリームワークスに任せりゃいいんじゃないか。横綱が変化をつけて飛び道具も満載ってのは卑怯だぜ。

★そんなわけで、久方ぶりにお外に出たからネジがユルんでいるのか、若干「らしくない」素っ頓狂な作風になっているのは確かだが、それも込みで楽しい。ぜひとも超絶美麗CG世界を旅する、ハラハラ・ドキドキ風変わり恐竜カートゥーン西部冒険活劇を体験してもらいたい。