ペジオ

グランドピアノ 狙われた黒鍵のペジオのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

ヒッチコックやデ・パルマよろしく凝りに凝った映像の力業で、要所要所のサスペンス空間をこしらえて細かいツッコミ所をねじ伏せるストーリーテリング

野暮かもしれないと思いつつ、あえて辻褄を合わせようとするなら、全ては主人公の脳内で起こったことなのかもしれない

主人公が楽譜を探して舞台裏を走り回るシーン
犯人が主人公に「違う。そっちじゃない。階段はこっちだ。」みたいなことを言う
何故その場にいない犯人が主人公が道を間違えたことを知ることができたのか?
「犯人など最初からおらず、すべては主人公の脳内で響いていた妄想」と解釈すれば筋が通る

過去の失敗で長いブランクがある主人公が再起を賭けた久々の表舞台で、そのプレッシャーたるや凄まじいものであることは想像するに難くない
失敗の原因である難曲を強要してきたり、妻への不信を見透かしてきたりする犯人の声も、主人公自身が少なからず思っていたことなのだ
そもそも事件などは起きておらず、アーティストである特異な主人公の脳内を映像化したに過ぎないのではないか
さすれば、現実感から遊離したテクニック満載の映像にも必然性が生まれそうだ

結果として主人公は自らのトラウマを乗り越えて歓声を勝ち取る
最後に手に入れたこの映画のマクガフィンでもある「遺産」が目に見えないモノ(我々観客には見せない)であったことにも、何か深い意味を読み取ることができるかも
ペジオ

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