Yoshishun

たまこラブストーリーのYoshishunのレビュー・感想・評価

たまこラブストーリー(2014年製作の映画)
4.4
約4年ぶりに再見。
心がしんどい時に映画を観てリフレッシュすることがあるが、本作はその中でも群を抜いてリフレッシュ、というより心が浄化される。

山田尚子×吉田玲子という現代のジャパニメーション最強タッグといっても過言ではない両者が、2014年に公開した本作は、TVシリーズ『たまこまーけっと』の続編となる劇場版。

“もし、隣りにいるのが当たり前だった人から、突然告白されたら?”
本作は主要キャラが美男美女だから成立する話ではない。
誰にだって身近にいる異性がいるんじゃないか?
少しでも好意を持って、ましてや告白してしまえば、もう告白する前の関係性には戻れないのではないか?
身近でなくとも、勇気を出して告白したことで、関係を逆に壊してしまう結果になりえないか?
そんな思春期を経験したかつての少年少女たちに深く刺しながらも、とてつもなく温かいエールを送る内容といえる。

たまこは幼馴染からの告白に困惑し、もち蔵は幼馴染への告白に後悔するばかり。2人以外のキャラクターでは、かんなは建築業志望なのに高所恐怖症、詩織は外国語大学への進学に悩み、緑はたまこへの好意ともち蔵への苛立ちに葛藤する。それぞれが何かを抱え、やがて自分なりに答えを見つけ出していく。若者に悩みはつきもの、なにか変化していくことにこそ描く価値があるという山田監督の思惑通り、本作は劇的な見せ場はなくとも、何ら変哲のない変化そのものに物語の重きを置く。これぞ、山田監督らしい青春映画そのものだ。

現代となっては、アナログなイト電話でさえも、あの爽快過ぎるラストシーンのように、使い方が上手い。携帯電話を持っているのに敢えて家の窓から糸電話を通じてやり取りを行うユーモアさ。そして、かんなが冒頭でポロッと言ったバトンキャッチの台詞がまさかの伏線であったという潔さ。ラストシーンでのカタルシスが凄まじいのはまさに糸電話を二人を繋ぐアイテムとして上手く機能させた結果といえる。

また、たまこの両親の告白後のエピソードがたまこともち蔵のそれであったり、河川敷での何気ない会話、上述のバトンキャッチの件含め、細かな工夫が凝らされた脚本がとにかく上手い。カフェのマスターの台詞に本作のテーマが込められており、たまこともち蔵のコーヒーに対する反応の違いにも大人に近づくことへの思考の違いを考え取れる。

70分とかなり短いながらも、やがて卒業の近づく青春をこれでもかと詰め込んだ甘酸っぱい純愛物語。TVシリーズでは決して描かれなかった2人の恋の結末に悶えっ放しな至高の時間を味わえる。むしろ短いのでもっと見ていたい。

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(2019/7/19)✩4.3

最近ストレス溜まってたんで、何か癒されたいなぁと思ったので、久々に本作を手に取りました(*^^*)

1回目はただ単に綺麗な青春物語という印象でした。しかし、2回目見たときに、「あれ、こんなに面白かったっけ?」って思わず口に出してしまいましたw

一応自分が男である以上、本作の主人公の1人・もち蔵に共感すべきなんですが、珍しいことにもう一人の主人公・たまこに感情移入してしまうんです。中盤でのもち蔵からの告白により、何かが変わってしまった思春期特有の動揺の仕方が変に共感してしまったんです。ちょっともち蔵のたまこへの執念が人によっては気持ち悪いと思うかもしれませんw

ちょっと映像面での話に変えますが、京アニである分、キャラデザ、背景、音楽、どれを取っても綺麗としか云いようがありません。更にあの鳥がいなくなったことで、無駄なファンタジー描写が無くなって、純粋な青春讃歌にふさわしい演出には脱帽です。まあ京アニなので、女性キャラの目が異常にデカい等の独特の描き方は健在ですが(^_^;)

告白されてから生活にちょっとした支障をきたすようになったたまこ、告白してからたまことうまく接することが出来ないもち蔵。この二人の関係は、高校時代に僕が経験した恋愛と似ていました。告白するタイミングがセンター試験前という馬鹿な時期にしてしまいました。相手の女子も勉強にあまり手がつかなくなり、僕自身もその子とうまく接せられなくなりました。要するに、本作はそんな淡くて辛い青春を思い出させてくれました。

また、もち蔵の告白によって、彼の知人全員がちょっとした影響を受ける様子は、同じ高校時代を歩んだ自分にとって妙にリアリティーがあります。

あとタイトルに恥じないラブストーリーであることは偉いと思います。

本作のラストは、そんな高校時代の苦悩をも吹き飛ばす気持ちの良いものとなっています。あのラストシーンは逸脱です。残念ながら自分自身はそんな結末を迎えられませんでしたが、もし本作のような結末を迎えていたらどうなっていたか?と考えてしまいます。

とにかく、本作は甘酸っぱい青春を思い出させてくれる良作です。90も無いので、気軽に見れます。一応TVシリーズを見てから映画を観るのも良いですが、本作だけ観ても良いかもしれませんw

とりあえず諸悪の根元は鳥でしたw

追記:主題歌「プリンシパル」が頭から離れなくなった(*´ω`*)
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