りっく

神田川淫乱戦争のりっくのレビュー・感想・評価

神田川淫乱戦争(1983年製作の映画)
4.3
スラップスティックでカルト臭が漂う怪作だが、きちんとエンターテイメントに仕上げているのが黒沢清のいいところ。シネフィル的な小難しさは一切皆無。

母子相姦される少年を救うことで、神田川を挟んで向かいのマンションの部屋=彼岸と此岸が繋がる視点。それがホラーになるか喜劇になるかの違いはあるが、後の黒沢清映画のベースとなる設定そのもの。

また受験戦争に直面する息子と、息子が他の女性に興味を持たないように教育・調教する母親。川に隔たれた団地の一室の異質な世界を外側から力づくで破壊し、親から子供を救出するという展開は、乾いた笑い含め同じ80年代を代表する「家族ゲーム」を連想させる。

花火をもって部屋に乱入し、狂った母親の自由を封じ、同じく狂った少年とヤルという狂乱と祝宴が同時に起こる部屋。
橋から飛び降りようとして母親に止められ、徐々に二人で狂ったように歌を口ずさむ場面。
逃げ出した少年を導く女の姿を買い物帰りの母親が見つけ、買い物袋を振り回しながら用水路で暴れ、しまいには疲れ切った母親を板に乗せ退場させふたりで疾走する長回しの場面。
ラストはマンションの屋上でセックスするがもたれかかっていた金網が外れ少年が転落。後を追うように女も落下。
なんて狂ったシーンのつるべ打ち。素晴らしい。
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