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未来を花束にしてのzunzunのレビュー・感想・評価

未来を花束にして(2015年製作の映画)
3.8
公民権運動などもそうだったが、何かの権利を勝ち取る為に、暴力性で訴える者がいる。
もちろん過激派もいれば穏健派もいるだろうが、この作品に於いては過激な女性参政権運動が描かれる。
体制の流れを変える転機となるある人物の自己犠牲の行為にも、ある種の"暴力性"のようなものを感じる。
そこまで暴力的な行為に訴えなければならないほど、女性の存在が軽く見られていたとも言える。

主人公モードが一介の貧しい主婦から、参政権運動に参加し過激派に加担していく過程の描き方が丁寧なので、モードに共感し易い作りになっている。
貧しいく過酷な労働に従事し、未来に希望の持てない日常、スピーチをしたことで主張するこの意味を知るも、同時に言葉の無力さも知る。そして決定的なのは女性に親権がないが為に子供を取り上げられたこと。酷い拷問を受けても、めげない動機や姿勢の描き方は巧みと言える。同時に当時の女性の置かれていた立場がよく分かる。
また、闇雲に過激な行動を賛美して描いている訳でないので作品としてバランスが取れている所も良い。

モードに影響を与えるエメリン・パンクハーストを演じるのはメリル・ストリープ。ちょい役ながら象徴的な存在感を発揮。女優の代表格でもあり、マーガレット・サッチャーを演じたことを考えると考え深い。脚本家も『サッチャー』と同じ。

モードを演じるのはキャリー・マリガン。仰々しさからかけ離れた演技には静かに心に訴えるものがある。

最後の実写部分は、権利の勝ち得る為の闘いと、その為の犠牲があったと言うことを実感させてくれる。 のうのうと生きている自分が少し恥ずかしくもなった。
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