最早『マダガスカル』ではない!?
いや、これはあくまでペンギンズの映画だ!
ドリームワークスの代表作『マダガスカル』シリーズの人気キャラ・ペンギンズを主人公にしたスピンオフ。
個人的にはシリーズ自体に深い思い入れは無いものの、2と3は中々の良作だと思う。
そんな『マダガスカル』で、1~3まで全くブレない存在が本作の主人公・ペンギンズ。皆のリーダーしかし少し抜けている隊長、分析官のコワルスキ、存在が破壊兵器のリコ、そしてキュートながらも実力は抜群の新人。4匹はあのマダガスカルの連中の下を去り、しれっと世界中のペンギンを救うべく闘っていた!というのが本筋。
シリーズ最高の評価をつけているのだが、本作は『マダガスカル』として観ればあんな無邪気に踊っていた頃からは想像もできない程のアクションものになっていて驚くことだろう。しかし過去作でもスタイリッシュかつ大胆に、出番こそ少なかれど観客に強い印象を残したのも確か。そんな彼等の単体作品が作られるのだからファンには堪らないものだろう。
さて、本作はスパイアクション、それもCGアニメだからこそできる演出に驚く。ヴェネチアでのボートチェイス、飛行機から飛行機へと飛び移る空中アクション、そして新キャラのノース・ウィンドウの面々による本格派スパイアクション。実写でやるには浮いてしまいそうな演出をこれでもかと詰め込んでくる。それも画的にも楽しめるから、よくある子供向け映画よりも優れているといっていい。
また、テンポよくギャグの応酬が散りばめられているのも見所。序盤の新人誕生エピソードでのコワルスキの辛辣な一言や一向に敵の名前を覚えてくれない隊長、中盤のノース・ウィンドウの話を聞かない隊長や、何でも呑み込んでしまうリコ。あれよあれよと押し寄せるギャグにお腹いっぱい。
また過去作では、やはりマスコットキャラに落ち着いていた新人の葛藤を描くという点でも新しい。周囲からはまさにペンギンらしく可愛い存在であるという不遇な扱いを受けながらも、渋々命令に従う新人。本作では隊長に口答えする珍しい場面も見られ、新人のチーム愛、誰かの役に立ちたいという想いがみてとれる。勿論新人らしい甘えも序盤で見られるのだが。
今回の悪役であるタコのデイヴについては、よくある嫉妬からの復讐心で世界中のペンギンを怪物化させることを目論むが、どこかのネズミ帝国映画のように案の定悪党の末路は容赦ない。せっかく自身の復讐にやるせなさを感じていただけに、もう少し救いがあっても良かったように思う。また、ノース・ウィンドウは主要メンバー四人しかほぼ登場せず、せっかくの広大なアジトの描写を避けているようで残念であった。
しかし、シリーズ中最も熱い作品であることに変わりないし、他のドリームワークス作品よりも素直に楽しい快作となっていることは間違いない。何故これが小規模公開という扱いを受けたのか不思議な程、多彩な魅力に満ちた作品であった。